矯正中のフロスが大切な理由とは？美しい歯になるための正しい使い方！

ワイヤー矯正では、ワイヤーが邪魔をして歯間に歯ブラシが届かず、汚れが残ってしまうことがあります。またブラケットの凹凸や、ワイヤーあるいはブラケットと歯の隙間にも汚れが入り込みやすくなります。

そうした汚れを取り除くのに適しているのがフロスです。

後述する虫歯・歯周病の予防だけでなく口臭を防ぐことにもつながるため、フロスを使った正しいお手入れの仕方をぜひ身につけておきましょう。

なおフロスには糸のみの「ロールタイプ」と、持ち手がついた「ホルダータイプ」があり、さらにホルダータイプには、柄の部分が爪楊枝のように尖った「フロスピック」、先端がブラシになった「歯間ブラシ」などがあります。

ブラケットの凹凸や、ワイヤーおよびブラケットと歯の隙間に入り込んだ汚れは、歯間ブラシを使うと落としやすいでしょう。なおフロスピックのピック部分を使う方法もありますが、ピックは硬く柔軟性がない上に長さや太さもあるため、使用すると矯正装置が外れてしまう場合があります。以上の理由から、矯正装置まわりのお手入れには歯間ブラシをおすすめします。

ワイヤー矯正中は、歯ブラシのみのケアだと歯間やブラケットと歯の隙間などに汚れが残りやすく、そうした場所の虫歯リスクが高まります。歯と歯肉の境目も磨きづらくなるため、歯周病のリスクも同じように高くなると考えてよいでしょう。

マウスピース矯正の場合は矯正装置が取り外しできるので、ワイヤー矯正に比べると虫歯や歯周病のリスクは低く感じるかもしれません。しかし、お手入れが不十分なまま1日20時間など長時間装着していると、菌が繁殖して虫歯や歯周病のリスクも高くなります。

矯正中はフロスを併用し、歯ブラシでは届かない場所のケアを入念に行うことで、虫歯や歯周病のリスクを減らすことが大切です。

矯正装置に食べかすなどの汚れ（歯垢）が付着した状態が続くと、やがて石灰化して歯石となってしまいます。歯石は歯ブラシでは落とせず、無理に取ろうとすると矯正装置を壊したり、マウスピース型矯正装置であれば欠けたりすることも考えられます。

矯正中、定期的に歯科医院でクリーニングを受けていれば歯石も溜まりにくいはずですが、通院期間が空いてしまうと歯石ができるリスクが高くなります。

歯石の付着がひどくなるとワイヤーやブラケット、マウスピースなどの矯正装置を作り直す必要性も出てきます（そのままでは不衛生、マウスピースでは形が合わなくなる等が理由です）。

矯正装置の寿命を無駄に縮めないため、また作り直しといった余計な費用を抑えるためにも、矯正中は歯ブラシとフロスを併用した入念なケアが大切です。

糸のみのロールタイプは、ワイヤーが邪魔でブラシが入り込めない歯間のケアに適しています。使いやすい長さにカットして、針の穴に通すように歯間に差し込んだら、歯間の側面に沿って上下前後に動かせば簡単にケアができます。

ロールタイプには、糸がコーティングされていて切れにくいワックスタイプと、コーティングがない分、汚れが糸に絡んで取り除きやすいノンワックスタイプがあります。初心者は切れにくいワックスタイプから試すとよいでしょう。

歯間ブラシはI字型やL字型をしており、先端に細いワイヤーとブラシがついています。歯間に直接差し込んでゴシゴシと汚れを取り除くだけでなく、ブラケットの凹凸部分および、ワイヤーやブラケットと歯の隙間などの清掃にも活用できます。持ち手があるのでロールタイプが苦手という方にも使いやすいでしょう。

なお4S〜LLまで、様々な太さがある点に注意が必要です。歯間が狭い方が太い歯間ブラシを買ってしまうと、入らない・汚れに届かない・歯肉を傷つけるなどのリスクがあります。

歯間ブラシを使ったことがない方は、定期検診やクリーニングの際に自分に合うサイズを調べてもらいましょう。

歯ブラシとフロスの順番に決まりはないため、慣れているやり方で構いません。フロスが初めての方や使い慣れていない方は、残った汚れを取り除く目的で、歯磨きのあとにフロスを使うとよいでしょう。

なお矯正中はフロスだけでなくブラッシングも難しくなります。歯ブラシの毛先を立てて、ブラケットの形状に沿わせながら小刻みにブラッシングしていくのがポイントです。

毛先が山型やU字型の、矯正専用歯ブラシも販売されています。矯正装置に負担がかかりにくく、ブラケットと歯の隙間なども磨きやすい作りになっているので、慣れるまではそうした歯ブラシを使うのもおすすめです。

ロールタイプのフロスは両手の中指に2〜3回ほど巻きつけたのち、親指と人差し指でピンと張るようにつまんで持ちます。ノコギリのようにスライドさせながら、歯間に少しずつ入れていき、歯の側面に沿って上下に動かして歯垢を取り除きます。

一方ホルダータイプは柄の部分を持つだけですが、利き手・歯の上下・歯の裏表などお手入れする部位によって持ち方を変えるのがポイントです。

特に、利き手でばかりお手入れをしようとすると難しい箇所があり、汚れが残ってしまうことがあるため注意が必要です。たとえば右利きの方は、右下や右上の裏側・奥などをケアする際、左手に持ち替えたほうがやりやすくなります。

フロスは「ゆっくり・丁寧に」を心がけましょう。歯間にフロスを挿入するとき・歯間から引き抜くとき、歯間の汚れを落とすとき、ブラケット周りの汚れを落とすときなどいくつかポイントがあります。

たとえばフロスを一度抜いてワイヤーを避け、再度歯間に差し込むといったことが面倒に感じるかもしれませんが、矯正器具に無理な力が加わり歪んでしまうおそれがあるため、強引に汚れを取ろうとすることは控えましょう。

またブラケットと歯の隙間の汚れが取れないからと、硬いフロスピック等を強引に差し込むのもいけません。ブラケットは強力な接着剤で取り付けられていますが、繰り返し無理な力が加われば外れてしまうおそれがあります。

矯正装置の作り直しで治療が中断したり、余計な出費を増やしたりしないためにもフロスはゆっくり・丁寧に行うことが大切です。

フロスは、歯肉に力強く当てたりゴシゴシ強く擦ったりすると、歯肉が傷つき出血することがあるため注意しましょう。

とはいえ歯間をお手入れする場合、フロスは歯と歯肉の境目まで（歯肉に少し食い込むくらいまで）しっかり入れることが大切です。歯と歯肉の境目・歯肉の溝は虫歯や歯周病の原因となる汚れが溜まりやすいため、力加減に気をつけつつもケアは怠らないようにしてください。

矯正装置は、無理な力が加わると歪んだり外れたりするおそれがあります。フロスを引っ掛けたときに強引に抜いたり、ワイヤーが歪むほど強引に押し込んだりなど、矯正装置に無理な力がかかる動作は控えましょう。

矯正装置を作り直すことになれば、治療が中断してトータル期間が延びてしまうだけでなく、本来不要な追加費用がかかるかもしれません。フロスが引っ掛かって取れないなどのトラブルは、必ず歯科医院で対処してもらいましょう。

上記以外にも、矯正中のフロスの使い方について歯科医師や歯科衛生士から注意点などを伝えられている方は、必ずその指示を守るようにしてください。

また「フロスが引っかかりやすくなった」「フロスがすぐにほつれてしまう」などという場合、虫歯や歯石ができている可能性があります。少しの違和感でも歯科医師や歯科衛生士に相談し、早めに対処してもらうことを心がけましょう。