歯列矯正中の喫煙はOK?マウスピース矯正への影響も解説
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矯正をお考えの喫煙者の方は、歯列矯正中にたばこを吸ってもいいのか、気になりますよね。
「電子たばこや加熱式たばこならいいのかな?」
「マウスピース矯正ならできるかもしれない」
と思う方もいるかもしれません。そこでこの記事では、歯列矯正をしながら喫煙をしてもいいのかについて解説します。
この記事の監修医師
古川 雄亮 歯科医師
- 監修
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
矯正中に喫煙してもいいのか?
結論からお伝えすると、矯正中の喫煙はよくありません。
矯正中の喫煙がよくないのには、5つの理由があります。
1.矯正が進まない
たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素により末梢血管が収縮したり、血液の中に含まれる酸素が不足することで血流が悪くなってしまい、骨の代謝が悪くなります。
歯列矯正は矯正力で歯を支える歯槽骨の吸収と形成によって歯が移動するため、骨の代謝が悪くなると矯正治療が長引いてしまうでしょう。
2.矯正装置に色がつく
たばこに含まれるタールの影響で、矯正装置や歯に着色しやすくなります。
タールは粘着力が高く、歯や矯正装置に着色汚れができてしまうのです。
3.虫歯になりやすい
たばこの煙による口の乾燥と、ニコチンの影響で唾液の分泌が減少するので口腔内細菌が増加します。さらにタールの影響でヤニが付着するとヤニの上に歯垢がつきやすくなり、虫歯になる可能性が高まります。
4.歯周病になりやすい
ニコチンによる血管収縮の影響で歯茎の腫れや出血が少なくなります。歯周病が発覚しにくく気づいたときには、歯を抜く必要があるほど歯周病がかなり進んでいたなんてこともあります。
5.金銭と時間の負担が増える
喫煙による骨の代謝が鈍くなり矯正が進まないと、治療期間が長引いてしまうこともあります。通院毎に調整料がかかるなら経済的負担が増すでしょう。
電子たばこや加熱式たばこなら吸っても大丈夫?
矯正中の加熱式たばこはよくないですが、電子たばこはケースバイケースです。
加熱式たばことは、たばこ葉を使用して専用機器で加熱するたばこのこと。対して電子たばことは、たばこ葉は使用せずにリキッド(液体)を専用機器で加熱するたばこのことです(たばこ類似品であり、正確にいうとたばこではありません)。
加熱式たばこにはニコチンやタールが含まれており、矯正中は紙たばこ同様の悪い影響を及ぼします。
一方で、日本で販売されている電子たばこのリキッドであれば法律で規制されており、ニコチンやタールなどは含まれていません。電子たばこを吸って歯が動きにくくなるなどの矯正への影響は少ないでしょう。ただし、海外のリキッドはニコチンやタールなどが含まれている可能性があり、矯正中は紙たばこ同様の悪い影響が出るでしょう。
マウスピース矯正でもダメなの?
「マウスピース矯正なら取り外しができるから喫煙しても大丈夫でしょ?」
と思う方もいるかもしれませんが、マウスピース矯正中でも喫煙はあまりおすすめしません。
上記でもお伝えしている通り、ワイヤーやマウスピースなどの装置に限らず、喫煙していると骨代謝が悪くなり矯正治療がなかなか進まない可能性が高くなるでしょう。また、喫煙のたびにマウスピースを外した分、矯正力がかからず治療が遅れてしまいます。
マウスピースを装着する理想の時間は20時間以上といわれています。そのため食事や歯磨き、コーヒーやジュースを飲むときなどもマウスピースを外していると、装着時間は20時間ギリギリになるでしょう。喫煙でマウスピースを外す時間を追加すると、装着時間が足りなくなる恐れがあります。
もし、喫煙をする場合はマウスピースを取り外してたばこを吸い、終わったら必ず歯を磨きましょう。そうしないとマウスピースに着色汚れがついてしまいます。
矯正をきっかけに禁煙を始める3つの方法
「禁煙をするのは意志が弱くてできるか不安…」という方でも大丈夫。
矯正をきっかけに禁煙を始めようとお考えの方に3つの方法を紹介していきます。
1.目標を設定する
禁煙開始日を決め、徐々に喫煙本数を少なくするなど禁煙の目標を設定しましょう。
禁煙を開始した直後はたばこが吸いたくなる離脱症状(禁断症状)が出ると思いますので、対処方法を決めておくといいでしょう。例えば、食事のあとの喫煙を歯磨きに変えたり、コーヒーと一緒にたばこを吸っていた場合は紅茶に変えたりするなどです。
喫煙時とは違った行動を起こすことで、禁煙が成功する可能性が高まるといわれています。
2.禁煙補助薬(ニコチンパッチやニコチンガムなど)の使用
禁煙補助薬はニコチンによる離脱症状を和らげる効果があり、たばこ依存の弱体化が期待できます。ドラッグストアで購入でき通院の必要がないため、禁煙が難しいと感じる方におすすめです。
3.禁煙外来の受診
医療機関にて禁煙するための治療を受けて、医師と二人三脚で禁煙に取り組みます。禁煙治療は公的医療保険の適用となるので、費用の負担は少なく済むでしょう。ただし、禁煙治療が公的医療保険で受けられるのは限られており、以下の要件を満たさなければいけません。
・ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で5点以上、ニコチン依存症と診断された方
・35歳以上の場合、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の方
・直ちに禁煙することを希望されている方
・「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意された方
(厚生労働省
e-ヘルスネット「禁煙治療ってどんなもの?」より)
一人での禁煙に自信がない方は、禁煙外来も考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
歯列矯正中の喫煙は歯槽骨の代謝(吸収と形成)が悪くなり、矯正治療が長引く可能性が高いです。それに伴い、治療費の負担も増えることもあります。
矯正を機会に禁煙を検討してみてはいかがでしょうか。