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歯科矯正リテーナーはいつまで使う?種類や後戻りについて解説

歯科矯正リテーナーはいつまで使う?種類や後戻りについて解説 監修:古川 雄亮歯科医師歯科矯正リテーナーはいつまで使う?種類や後戻りについて解説 監修:古川 雄亮歯科医師

歯列矯正は装置が外れたら終わりではなく、リテーナー(保定装置)で整えた歯並びを保つ期間が必要です。

動かした歯の後戻りを最小限に抑えるために装置をつける期間を「保定期間」といい、動かした歯の位置を保つためにとても大切で、保定期間によってきれいな歯並びを長く保てるかが左右されます。

リテーナーの種類、期間、なくした時や壊れた時の対処法をご紹介します。既にリテーナーを使用中の方、これから歯列矯正を始める方にも役に立つはずですのでご覧ください。

この記事の監修医師

古川 雄亮 歯科医師

古川 雄亮 歯科医師

  • 監修

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

リテーナー(保定装置)とは

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リテーナーは矯正装置を外した後に、歯並びを安定させるために装着する装置のことです。矯正治療を終えた直後の歯はまだ動きやすく、矯正前の歯並びに戻ろうとする性質があります。これが「後戻り」です。

歯列矯正をして後戻りしたら嫌ですよね。リテーナーはできる限り歯が後戻りしないように維持させておくのが目的です。

リテーナーなしだとなぜ後戻りが起こる?

リテーナー(保定装置)とはの画像リテーナー(保定装置)とはの画像

歯列矯正で歯を動かすと、歯を支えている周りの骨(歯槽骨)の吸収と再生が行われます。骨が吸収した部分に歯が動き、歯があった部分には再生した新しい骨ができる代謝が生じることで歯が動いていきます。再生した骨が安定するまでには時間がかかるため、歯列矯正が終わった後もまだ歯は不安定な状態です。

歯と歯槽骨は直接つながっているわけではなく、歯根膜と呼ばれる薄い組織がつながっています。歯を動かすと歯根膜により引っ張られる力が増して歯が後戻りすることも考えられます。

歯の周囲の組織が矯正後の新しい位置で落ち着くには時間がかかります。その間はリテーナーをしっかりと装着して歯の位置が動かないようにすることで、矯正治療で整った歯並びをできる限り維持するのがリテーナーの目的です。

リテーナーの種類と特徴

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リテーナーは大きく分けて2つの種類があり、歯並びなどの状態によって使用する種類が異なります。各々のリテーナーの特徴を確認してみましょう。

可撤式リテーナー

可撤式(かてつしき)リテーナーとは、患者さんが自分自身で取り外しができるリテーナーのことです。

食事の時や歯磨き、清掃のために取り外すことができ、管理がしやすいリテーナーです。取り外しをするため、装着を忘れてしまったり紛失してしまいやすいことがデメリットです。

可撤式リテーナーにはいくつかの種類があるので、詳しくみていきましょう。

ベッグタイプリテーナー

一般的によく使われているリテーナーです。 歯の表面に沿ってワイヤーが通っており、歯の裏面には透明なプラスチックのプレートがあります。

笑った時にワイヤーが見えることがありますが、保定力の強いリテーナーであるといわれています。

ホーレータイプリテーナー

特に後戻りしやすい前歯だけ、歯の表面からワイヤーで保定するタイプのリテーナーです。

奥歯は裏側の透明なプラスチックのプレートのみのため、ベッグタイプリテーナーよりは装着の違和感が少なく済む患者さんもいます。

クリアリテーナー

マウスピースのような透明のリテーナーで、別名「ソフトリテーナー」「インビジブルリテーナー」「トゥースポジショナー」などとも呼ばれます。

歯全体を覆うように装着しますが、食事の際は必ず取り外しが必要です。
ほかのリテーナー比べて割れたりすり減りやすい傾向にあり、作り直しが必要になることがあります。

QCMリテーナー

前歯の部分が金属のワイヤーではなくプラスチックでできています。
奥歯はワイヤー、歯の裏面はプラスチックのプレートで保定しており、ホーレータイプリテーナーに似ているリテーナーです。

人から見えやすい前歯の部分が透明なプラスチックのため、目立ちにくい保定装置です。

固定式リテーナー

固定式リテーナーは、患者さんが自分で取り外すことができないリテーナーです。フィックスリテーナーなどとも呼ばれます。
例えば、歯の裏面に歯科用レジンでワイヤーを固定し、歯の移動を防ぐタイプなどがあります。

取り外せないのでなくすことがなく、食事の間も含めて24時間装着したままなのでしっかり保定できるのがメリットです。
一方、歯磨きの際にも外すことができないため、ていねいに歯磨きをしないと固定式リテーナーの周囲に歯石が付着しやすいです。

リテーナーは一生使うの?装着期間はどれくらい?

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リテーナーを使用して保定する期間はどのくらい続くのでしょうか?
せっかく矯正装置が外れたのに、結局目立つリテーナーをすることにがっかりしている方もいるでしょう。

リテーナーの装着期間はどのくらいなのか?1日何時間くらい装着しておくのか?を確認していきましょう。

リテーナー卒業までの流れ

▼歯列矯正終了後〜約半年
歯科矯正が終了した直後、リテーナーの使い始めの頃から半年くらいまでは、食事と歯磨き以外の時間はできる限り長く、1日中着けておくのが理想とされています。

▼約半年~約1年
約半年~約1年で徐々に装着時間を減らしていきます。外出時は外してよい、睡眠時だけでよい、など歯科医師の指示に従って少しずつ変えていきましょう。

比較的安定してきている期間ですが、つけなくなると後戻りしてしまう可能性は十分にあります。
1週間程で1日数時間の装着になるように調整していきます。

▼約1年~約2年
矯正終了後、1~2年経つとリテーナーの装着も終了に向かうこともあります。
リテーナーの装着期間はエビデンスが無いため、患者さんのお口の中の状態や歯科医師の考え方、矯正治療の内容によってはリテーナーを一生使うよう指示される場合もあります。

「後戻りのしやすさ」は歯並びや口周りの筋肉、舌癖、生活習慣などの影響を受けやすく、個人差があります。
後戻りをしてしまうと追加費用がかかったり、再度矯正装置をつけなくてはいけないこともあるため、リテーナーの終了には慎重になることも少なくありません。

保定開始からの通院頻度

リテーナーの装着を始めてから3ヶ月後に1度通院し、リテーナーの状態や後戻りの状態を確認していきます。
そこからさらに半年後、その次は1年後、というように通院間隔が空いていきます。

一般的に、保定期間が2年であれば通院は4回程度です。
保定期間が終わってからメンテナンスに通っておくことで、予想以上の後戻りに対応してもらえることもあるでしょう。

再治療の保証がある歯科医院では、定期的なチェックとメンテナンスが保証条件となっていることもあるので確認しましょう。

長期的な継続をおすすめする理由とは?

歳をとるごとに歯や歯肉、顎の骨は変化していきます。
そのため、リテーナーはできるだけ長期で使うほうがよいでしょう。
これまで大丈夫でも、お口の中の環境の変化によって歯並びが変わってしまうこともあります。

リテーナーを長く装着するほど、後戻りの可能性を減らすことができると考えておきましょう。

リテーナーのお手入れ方法と注意点

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リテーナーは長い期間お口の中に入れているものなので、手入れは欠かせません。
清潔ではないリテーナーを装着してしまうと虫歯や歯周病の原因となるほか、リテーナーに付着しているプラーク(細菌)により思わぬお口の中のトラブルが起こることも考えられます。

リテーナーの手入れは具体的に何をしたらいいのか確認していきましょう。

取り外しできるリテーナーの場合

自分で取り外しできるリテーナーは、取り外したらまずは流水でリテーナーをよく流しましょう。その後、毛先の軟らかい歯ブラシを使って、流水または40度程度までのぬるま湯で流しながら、汚れを優しく取り除きましょう。
ワイヤーとプラスチックのプレートのつなぎ目や、歯の形に沿わせてある部分に汚れが残りやすいのでよく確認するようにしましょう。

ほか、リテーナー専用の洗浄剤を使うことで歯ブラシでは除去できない汚れやカンジタ菌などの真菌や細菌を効率的に除去できます。
入れ歯洗浄剤に似ていますが、リテーナーの種類によっては適していない商品もありますので歯科医院で相談して取り入れてみてください。

洗浄剤を使った手入れは簡単です。ぬるま湯に洗浄剤を入れてリテーナーを漬けておくだけです。ただし、規定の時間よりも長く漬けているとリテーナーが傷んでしまうことがあるので注意しましょう。
また、同時に家庭用の超音波洗浄機を使用するのも効果的ですが、洗浄剤を入れると壊れてしまう超音波洗浄機もあるのでよく確認して使うようにしてください。

リテーナーの手入れの注意点

リテーナーの手入れをする際に熱湯消毒を考える方もいると思いますが、リテーナーに熱湯はNGです。
60度以上のお湯ではリテーナーが変形してしまう可能性が高いため、使用は避けましょう。

また、歯磨き粉でリテーナーを磨くこともNGです。歯磨きには着色汚れをとるための研磨剤が含まれていることがあります。
研磨剤とは歯磨き粉の中に含まれているじゃりじゃりとするもので、研磨剤をつけてリテーナーを擦ると傷がついて汚れが付着しやすくなります。歯磨き粉はつけないようにしましょう。

取り外しができないリテーナー

自分で取り外しができないリテーナーは、歯磨きをする際にワイヤーの周りをていねいに磨くことが大切です。

フロスが通らなくなるので、隙間がある場合は歯間ブラシを使用し、定期的に歯科医院でクリーニングを受けるようにしましょう。
その他、スーパーフロスという先端部分が細くて硬いフロスを隙間に通す方法があります。

リテーナーのよくあるトラブルと解決法

リテーナーのよくあるトラブルと解決法の画像リテーナーのよくあるトラブルと解決法の画像

可撤式のリテーナーは自分のタイミングで自由に取り外しができるので、つい装着をさぼりがちになる方も多いようです。

もし、リテーナーの装着をさぼった、なくしてしまった、あるいは壊れたらどのように対処すればよいのでしょうか。

リテーナーをさぼった

さぼった場合、まずリテーナーを装着しましょう。
装着時に多少のきつさを感じても、以前と変わらず装着できればそのままリテーナーを使用しても問題ないでしょう。

そのまま装着を続けていれば、矯正直後の歯の位置に戻る可能性が高いでしょう。
多少のきつさも、リテーナーをして歯の位置が元に戻っていけば感じにくくなるはずです。

装着してみて「痛みを感じる」「外すときに痛い」「浮いている感じがする」「ピッタリフィットしない」など、以前は感じなかったリテーナーによる痛みや違和感が強く感じる場合は使用を控えましょう。
リテーナーで治せる範囲の後戻りを超えてしまっている可能性が高いでしょう。

無理やりつけていると、歯の神経が死んでしまったり強い痛みを感じるようになったり、知覚過敏になるなどさまざまなトラブルが起こるかもしれません。
リテーナーの違和感や痛みを感じる場合は、矯正治療を受けた歯科医院でリテーナーをさぼってしまったことを正直に伝えて相談してください。

リテーナーが壊れた

リテーナーが壊れた時は、壊れたリテーナーを持って歯医者さんに相談しにいきましょう。壊れたリテーナーは装着してはいけません。壊れたリテーナーによって口の中を切ってしまうなどの可能性があります。

リテーナーは壊れた程度によっては修理で再度使えるようになります。
リテーナーの破損が小さければ修理は比較的すぐに終わるため、当日中に返してもらえることもあります。

ただ、大きめな破損だと修理に時間がかかったり、リテーナーの作り直しになることもあります。作り直しの場合は、2~7日ほどかかることが多いでしょう。
その間はリテーナーを使えない状態ですが、数日であれば基本的には大きな問題有りません。不安な場合は、担当歯科医師に相談しましょう。

また、よくなくす・よく壊すと思っている場合は、事前に予備を作ってもらっておけばリテーナーを使い続けることができます。
予備を作ってもらえるかどうか、予備にいくらくらいかかるかを歯科医師に確認しましょう。

リテーナーをなくした

リテーナーをなくした時も、すぐに歯医者さんに相談しましょう。リテーナーは再度作るのに時間がかかります。

破損や紛失を防ぐには「リテーナーケース」がおすすめ

破損や紛失を防ぐには「リテーナーケース」がおすすめの画像破損や紛失を防ぐには「リテーナーケース」がおすすめの画像

リテーナーをなくしたり壊したりしないために、リテーナーケースを使うことがおすすめです。リテーナーを取り外したらすぐにケースに入れる習慣をつけておくことで、うっかり捨ててしまった、うっかり踏んで壊してしまった、どこかにいってしまった、ペットに噛まれたなどを予防できます。

ティッシュに包んでいたり、食事のトレーに載せているとそのまま捨ててしまうことも少なくありません。リテーナーケースに入れておくと未然に防げます。

まとめ

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歯列矯正後は、リテーナーを装着して後戻りを最小限に抑えて歯並びや噛み合わせを保定する必要があります。リテーナーの装着期間は個人差がありますが、一般的に歯を動かす動的矯正期間と同じくらいの期間が必要という考え方があります。ただし、同じ期間装着した後に絶対に後戻りしないとは言い切れません。

「やっと歯列矯正が終わった!」と、ほっとした気持ちがある一方、「リテーナーの装着が面倒くさい!」と思う気持ちなどもあるでしょう。しかし、保定期間も矯正治療の一環です。しっかりと装着して、せっかく時間もお金もかけて整えた歯並びを維持しましょう。リテーナーの装着不足で、後戻りしてしまうのはもったいないです。
整った歯並びと噛み合わせは一生の財産です。歯列矯正で整った歯を守るため、リテーナーの装着をできるだけ長くされることをおすすめします。