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ディスキングを勧められたら?【健康な歯を削る不安】を解消する判断基準

ディスキングを勧められたら?【健康な歯を削る不安】を解消する判断基準 監修 宮島 悠旗 歯科医師の画像

ディスキングには「健康な歯を削る」というデメリットがある一方「抜歯をせずに理想の歯並びを目指せる」というメリットもあります。
健康な歯を削るため、驚きや不安を感じているかもしれません。しかし大切なのは、イメージではなく正しい情報を知ること。

本記事では、ディスキングの基礎知識をメリット・デメリットとともに解説します。また学術論文や学会の症例、歯科医師のリアルな見解など、客観的事実に基づいたディスキングの評価も徹底解説。

リスクと効果を正しく比較し、それでも迷う方が納得して決断するための「判断基準」をお伝えします。

この記事の監修医師

宮島 悠旗 歯科医師

宮島 悠旗 歯科医師

  • 監修

愛知学院大学歯学部を卒業。東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了。東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野の助教授を務めたご経験もあり、現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランスの矯正歯科医として活躍しています。
専門は矯正歯科で、とりわけマウスピース型矯正、小児矯正、マルチブラケット、アンカースクリュー、光加速矯正装置などに精通しています。

矯正治療で行われる「ディスキング」とは

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ディスキングとは、歯の側面のエナメル質をヤスリで整えるように薄く削る処置のこと。専門的には「IPR(Interproximal Reduction)」や「ストリッピング」とも呼ばれます。

「歯を削る」と聞いて、驚きや不安を感じた方もいるかもしれませんが、ドリルで大きく穴を開けるわけではありません。削除量は、一般的に片側わずか0.25mm程度(左右合わせて0.5mmほど)。これは、ポストカードに使われる「光沢のある厚紙(約0.27mm)」1枚分よりも薄い厚みです。

ディスキングでは、その"ほんのわずか"なスペースを作ることで、抜歯をせずに歯をキレイに並べる準備を整えます。

目的と効果

ディスキングの最大の目的は「抜歯をせずに、歯がきれいに並ぶためのスペースを確保すること」です。歯1本1本の幅をわずかに小さくすることで、歯列全体にゆとりを持たせ、重なりやガタつき(叢生)の解消を目指します。

また、単にスペースを作るだけではありません。以下の効果も期待できます。

  • ブラックトライアングルの改善:歯茎が下がって歯と歯の間にできる黒い三角形の隙間を、歯の形を整えることで目立ちにくくします
  • 歯の大きさのバランス調整:上下の歯のサイズ比を整え、見た目だけでなく噛み合わせの向上も図ります

健康な歯を削ることには抵抗があるかもしれませんが、抜歯という大きな負担を避けつつ、審美性と機能性の両方を高めるための有効な手段といえます。

推奨される症例と不向きな方

ディスキングは、すべての方が適応対象というわけではなく、口腔内の状態によって向き・不向きがあります。

▼推奨されるケース

  • 出っ歯やガタつきがあり、歯がきれいに並ぶためのスペースが不足している
  • 歯そのもののサイズが大きく、顎のバランスと合っていない
  • 健康な歯を抜く(抜歯する)ことは避けたい

▼不向きな方(慎重な判断が必要な方)

  • 唾液が少ない・薬の副作用で唾液が減っている(再石灰化作用が弱く、削った面の虫歯リスクが高まる可能性がある)
  • 10代などの若年者(エナメル質や象牙質が薄いため、知覚過敏に似た症状が起こりやすい)
  • 歯周病が進行している(歯を支える骨が減っている場合、歯茎が下がるおそれがある)

ご自身がどちらに当てはまるか、まずは歯科医師による診断を受けることが大切です。

宮島 悠旗 歯科医師

宮島 悠旗 歯科医師

監修医師が答える!
「ディスキングが適応される症例とは?」

ディスキング(IPR)は、「叢生(ガタガタの歯並び)」や「歯が大きくてスペースが不足している軽〜中等度の症例」に対して非常に有効です。

特に、歯列全体の調和をとるために1歯あたり0.25mm前後のエナメル質を削ることで、非抜歯での治療が可能になるケースが増えます。また、ブラックトライアングルの軽減や、上下顎の歯のサイズバランスを整える目的でも適応されることがあります。

一方で、重度の叢生や、顎骨の不調和が大きい骨格性の症例では、ディスキングでは不十分で、抜歯や顎矯正手術を併用する必要があります。

実際の処置はどのように行われる?

  1. 削合(さくごう):専用のヤスリや、歯科用のダイヤモンドディスク(円盤状の器具)を使用し、歯の側面の形を整えながら慎重に削ります
  2. 研磨:削った直後の表面はザラザラしているため、研磨用ディスクやストリップスを使ってツルツルに磨き上げます。プラーク(歯垢)の付着を防ぐ重要な工程です
  3. コーティング(歯科医院によります):最後に高濃度のフッ素を塗布し、エナメル質の強化と虫歯予防を行います

上記がディスキングの大まかな流れで、麻酔なしで行われることが一般的です(エナメル質には神経が通っていないため、痛みはほとんどないとされています)。「ガリガリ削られる」というよりは「形を整えて磨く」というイメージに近いでしょう。

ディスキングのメリット

ディスキングのメリットの画像 ディスキングのメリットの画像

ディスキングは、痛みの少なさや治療期間の短さも魅力ですが、さらに「抜歯を回避できる」という大きなメリットがあります。
抜歯を回避することは、仕上がりの美しさと将来的な安定性にも直結します。ここではディスキングのポジティブな側面に目を向けてみましょう。

抜歯を回避できる

矯正治療でもっともハードルが高いのが「健康な歯を抜くこと」ではないでしょうか。スペースが足りない場合、通常は小臼歯などの抜歯が検討されますが、ディスキングなら大切な歯を失わずに済む可能性が高くなります。

1本ごとの切削量はごくわずかですが、複数の歯で行うことで「並ぶためのゆとり」を作り出せるのがディスキングです。
「健康な歯を抜くのは嫌だ」という方にとって、歯を残したまま理想の歯並びを目指せる点は最大のメリットでしょう。

後戻りが少ない

矯正治療後に多くの方が心配する「後戻り(歯並びが元に戻ってしまう現象)」。ディスキングには、このリスクを減らす効果も期待できます。

通常、丸みを帯びた歯同士は「点」で接触していますが、ディスキングで側面をわずかに平らに整えると、歯同士が「面」で接するようになります。面で支え合うことでスクラムを組むように安定感が増し、きれいになった歯並びを長期的にキープしやすくなるのです。

噛み合わせや審美面の改善が望める

単にスペースを作るだけでなく、歯そのもののプロポーション(形)を整えることで口元の印象がより洗練されます。

たとえば、扇状の歯を四角く整えると「ブラックトライアングル(歯と歯茎の間の黒い隙間)」が目立ちにくくなります。また上下の歯の大きさのバランスを微調整して、カチッと噛み合うようにすることも可能です。

このようにディスキングであれば、機能的にも見た目にもワンランク上の仕上がりが目指せます。

ディスキングのデメリット・リスク

ディスキングのデメリット・リスクの画像 ディスキングのデメリット・リスクの画像

メリットが多いとはいえ、健康な歯に手を加える以上、リスクがゼロというわけではありません。「削ったらどうなる?」「将来後悔したくない」という不安を解消するため、ネガティブな側面も把握しておくことが大切です。

デメリットや注意点を理解した上で、納得して治療に進むことが「安心」への第一歩となります。

健康な歯のエナメル質を削ることになる

もっとも大きな心理的ハードルであり、物理的な事実は「一度削ったエナメル質は二度と元に戻らない」ということ。

歯の表面にあるエナメル質は、皮膚や骨と違って自然に再生することはありません。削る量は微量で、歯の寿命に影響するレベルではないとされています。しかし「健康な天然歯に傷をつける」という行為そのものに抵抗を感じる方もいるでしょう。

だからこそ「なぜ削る必要があるのか」を、自分自身が深く納得できているかどうかが非常に重要になります。

歯を大きく移動する症例には不向き

ディスキングは万能ではありません。作れるスペースには物理的な限界があります。

1本の歯の片側で削れるのは0.25mm程度。すべての歯に行ったとしても、確保できるスペースは数ミリです。
そのため重度のガタつき(叢生)や、大きく歯を動かす必要がある出っ歯などの症例には対応できません。
強引にディスキングだけで解決しようとすると、歯が極端に細くなったり十分な治療効果が得られなかったりすることもあります。

あくまで「適度なスペース不足」を補うための処置であることを理解しておきましょう。

知覚過敏や虫歯リスクが高まるのは本当?

ディスキングについて調べている最中に「しみる」「虫歯になりやすくなる」といったネガティブな情報が出てきて不安を覚える方もいるでしょう。

理論上は、エナメル質が薄くなることで外部刺激が伝わりやすくなったり、防御機能が弱まったりする可能性はゼロではありません。
しかし、歯科医学の研究においては「適切に行われたディスキングであれば、虫歯や歯周病のリスクは高まらない」とする報告もされています。

実際のところどうなのか、学術論文も交えながら考察していきます。

宮島 悠旗 歯科医師

宮島 悠旗 歯科医師

監修医師が答える!
「ディスキングのメリット・デメリットについて」

学術的には、適切な症例に対して精密に治療を行えば長期的な健康への悪影響はほぼないとされており、実際の臨床でも多くの場面で有効に使われています。

メリットとしては以下があげられます。

  • 抜歯を避けながらスペース確保が可能(低侵襲で非抜歯矯正を実現)
  • 歯のプロポーションを整えることで審美性が向上
  • ブラックトライアングルの軽減、後戻りのリスク軽減にもつながる
  • 処置が短時間で済み、麻酔不要なことが多い

デメリットとしては以下があげられます。

  • エナメル質を削るため、一度削った部分は再生しない(不可逆的)
  • ごく稀に知覚過敏の原因になる場合がある
  • 唾液の少ない方、口腔衛生が不良な方では虫歯リスクがわずかに上がる可能性がある
  • 極端なスペース不足には不向き(削合できる量には限界がある)

ディスキングの安全性は?失敗や後悔はしない?

ディスキングの安全性は?失敗や後悔はしない?の画像 ディスキングの安全性は?失敗や後悔はしない?の画像

ディスキングは危険な治療ではありませんが、「不可逆的(元に戻せない)」な選択に迫られることに変わりはありません。そのため「まだ不安がある」という方もいるでしょう。

ここでは「大丈夫」という気休めではなく「専門家や研究者にはどう評価されているのか」という視点で掘り下げていきます。

長期的に歯の健康に影響がないとする学術論文もある

世界中では、歯科医師たちがさまざまな研究を続けています。その中にディスキングに関連するものがあるので紹介します。

まず、2007年出版のZachrissonらの研究(※1)では、ディスキングを受けてから10年以上経過した患者61人を追跡調査しました。
この研究では「新たな虫歯や歯周病の問題は増加せず、歯の健康に悪影響はなかった」と報告されています。

また、より新しい2021年のシステマティックレビュー(Gómez-Aguirreら)(※2)でも同様です。
彼らも、複数の研究データを解析した結果「虫歯や知覚過敏のリスク増加は認められない」と報告しています(ただし「より質の高い長期追跡調査が必要である」と結論づけています)。

もちろん「絶対」はありませんが、こうしたデータを見てみるのも、客観的に判断する材料の一つになるかもしれません。

日本部分矯正歯科学会のHPには症例が掲載されている

一般社団法人 日本部分矯正歯科学会のホームページでは、ディスキング(IPR)を取り入れた矯正治療の症例がいくつか紹介されています。

その症例では、歯の表面をわずかに削ってスペースを確保した上で矯正治療をした結果、歯列の重なりが改善したり、ブラックトライアングル(歯と歯の間の隙間)が目立ちにくくなっている経過が確認できます。

※症例はあくまで一例であり、治療効果には個人差があります。
参考:部分矯正について|一般社団法人 日本部分矯正歯科学会

ディスキングで迷う人に対する歯科医師のリアルな見解

株式会社メディカルネットが運営する、国内最大級の歯科相談サイト「矯正歯科ネット」では、あなたと同じ悩みを持つ方からの質問が寄せられています。

以下は、異なる歯科医院から「ディスキングを行う治療方針」と「ディスキングを行わない治療方針」を提案されて悩んでいる方からの相談です。

ディスキングのデメリットは本当にないのか?[31才 女性 会社員]

前歯の空隙歯列とねじれ、上顎前突でマウスピースでの部分矯正を検討しております。二つの歯科医院を受診し、治療方針を出してもらいました。

  • A歯科医院
    矯正専門医ではない担当医師(普段、虫歯の治療などを行う)による「スマイルトゥルー」による治療。上下、ディスキングを行うことで、前に倒れた歯をより内側にいれることができる(Eラインを目指すもの)とのこと。ディスキングのデメリットは無いとのこと。
  • B歯科医院
    総合歯科ではあるが、非常勤の専門医がいる。「クリアコレクト」or「インビザライン」での治療。そこまで歯並びが悪いというわけではない、ディスキングは行わずに、気になる部分を整える8割程度の仕上がりに留めておいた方がよいのではないか、という提案。

ここで質問なのですが、B歯科医院の医師が、ディスキングをしない方がよいという理由に、ディスキング部分の「着色汚れ」をあげており(矯正完了後の)、エナメル質が薄くなるというのは、それだけ余計なものを吸収しやすくなるとのこと。実際そういった事例はよくありますか?インターネットで検索するかぎり、着色などのデメリットが出てきません。

また、Bの医師は、長い目で見たときの歯の健康という観点から(虫歯などのリスク)、ディスキングはおすすめしないそうです。そのような考え方に対して、他の先生方はどう考えられますか?

私自身、もしディスキングのデメリットが本当にあるのだとしたら、審美性と健康をどちらを優先するか、悩んでおります。参考までに、ご意見を頂けたら幸いです。宜しくお願いいたします。

セカンドオピニオンを利用した際、同じようなケースに直面する可能性があります。なお質問に対する歯科医師からの回答は、こちらのリンクから確認できます。
ディスキングのデメリットは本当にないのか- 矯正歯科ネット相談室

安心してディスキングを受けるために必要な考え方・行動

安心してディスキングを受けるために必要な考え方・行動の画像 安心してディスキングを受けるために必要な考え方・行動の画像

ディスキングの仕組みやメリット、気になるリスクについて、医学的な根拠も含め解説してきました。それでもまだ「治療を受けるか、受けないか」という迷いが消えたわけではないかもしれません。

あなたが心から「受けよう」「やめておこう」と判断し、後悔のない選択をするための、具体的なアクションを整理していきましょう。

自分自身の「納得感」をもっとも重視する

これまで見てきたメリットとリスクを、フラットな目線で天秤にかけてみましょう。

「なぜ私にはディスキングが必要なのか?」
「削らない場合はどうなるのか?」
「ディスキングによって将来も踏まえどのようなメリットがあるか」

などの疑問・不安をすべて解消するため、歯科医師に遠慮なく質問してください。特に「見た目だけでなく、噛み合わせのことも考えてくれているか」は重要なチェックポイントです。

丁寧に説明してくれる歯科医師なら、不安が「納得」に変わるかもしれません。あるいは「それなら自分には必要ないな」と判断できる可能性もあります。

セカンドオピニオンを利用する

歯科医師に相談しても迷うときは、別の歯科医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」をおすすめします。「他の先生に聞くなんて失礼かも」と気にする必要はありません。

同じ「歯並びを整える」というゴールでも、歯科医師によって方針やアプローチが異なります。どちらが正しい・悪いではなく「A院では必要といわれ、B院では削らない方法を提案された」という場合、あなたにとっても選択肢が広がるということです。

複数の視点を知ることで「この方法がベストだ」という確信が得られるか、あるいは「別の道もある」と気づけるか。どちらに転んでもプラスになるはずです。

ディスキング以外の選択肢も含めよく検討する

一般的な矯正治療は、人生を豊かにするという意味で「重要度」は高いですが、今すぐ何とかしなければ…という「緊急性」は高くありません。

そのため、他の選択肢(抜歯矯正、拡大床でのスペース確保、あるいは部分矯正ではなく全体矯正など)も含めじっくり比較検討しましょう。

費用、期間、装置の見た目、そして歯を削るかどうか。すべての要素を並べて、今のあなたのライフスタイルや価値観にもっともフィットする方法を選んでください。

まとめ

まとめの画像 まとめの画像

健康な歯を大切に思うからこそ「削る」ことに迷いを感じるのは自然なこと。ディスキングは抜歯を避けて歯並びを整えるための、有効な手段の一つですが、削った天然歯は戻せません。

大切なのは、メリットとリスクを正しく理解し、自分自身が心から「これなら納得できる」と思える道を選ぶことです。
そのためにも、まずは歯科医院で「私の場合はどうですか?」と相談することから始めてみませんか?

歯科医師の意見を聞き、自分の気持ちと照らし合わせることで、きっと自信を持って進める「正解」が見つかるはずです。

宮島 悠旗 歯科医師

宮島 悠旗 歯科医師

監修医師からのメッセージ

矯正治療は「歯を抜くのが怖い」「削るのは不安」といった気持ちがあるのは当然です。しかし、医学的に根拠のある選択肢として、ディスキングのように低侵襲な方法で美しく整えることも可能です。大切なのは“正しく理解し、納得したうえで選ぶ”こと。疑問があれば、ぜひ遠慮なく私たち歯科医師にご相談ください。あなたに最適な道を一緒に探しましょう。

こちらから、全国にある矯正治療を扱っている歯科医院、セカンドオピニオンや無料相談、カウンセリングを実施している歯科医院が探せます。ぜひ自分に合った歯科医院選びに役立ててください。

矯正歯科ネットプラス編集部

この記事の執筆者

矯正歯科ネットプラス編集部

矯正歯科ネットプラス編集部は、メディカルネットが運営する矯正歯科に特化した情報サイト「矯正歯科ネットプラス」で日々配信を行っています。

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矯正歯科ネットプラス編集部には、歯科医師・歯科衛生士が在籍しております。

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