大人の歯列矯正は医療費控除の対象?診断書など必要な条件を解説!
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大人の歯列矯正治療も医療費控除の対象になることをご存じですか?
成人矯正は、条件を満たすと医療費控除の対象となるんです。この記事では、医療費控除の対象となるケースや診断書が必要なのかどうかなど、矯正治療の医療費控除について詳しく解説します。
矯正治療費が少しでも安くなったら嬉しい方、矯正治療を始めたいけど高額な費用でお悩みの方は、医療費控除を活用してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修医師
佐藤 大貴 税理士
- 監修
上場企業の経理や事業管理として、10年以上業務に従事しながら、2023年4月に税理士事務所を開業する。
税理士業務もさることながら、企業での業務改善や学生に対する租税教室など、幅広く業務に携わっている。
「医療費控除」ってどんな制度?
医療費控除で矯正治療の費用が安くすむ、とよく目にしますが、医療費控除とはいったいどういう制度なのでしょうか。
医療費控除とは
医療費控除は「1年間に10万円以上の医療費を支払った(※)」場合に、確定申告を行うことで所得税の一部が免除される制度です。
自身だけではなく、生計を同一にしている配偶者や親族のために支払った医療費も含まれており、生計を同一にしていれば一緒に暮らしている必要はありません。普段から別々に暮らしている親や子供の生活費を負担しており、その親や子の医療費を支払った場合もその医療費は医療費控除の対象となります(※1年の合計所得金額が200万円未満の場合は、合計所得金額の5%相当額が足切り額となるため、この限りではありません)。
1月1日から12月31日までに発生した医療費を、翌年の1月から3月末の 間に確定申告にて申告する必要があります(個人事業主の納付、医療費控除は2月16日からです)。翌年の3月15日までに申請できなかった場合でも、5年以内ならさかのぼって申告が可能です。医療費控除は自分自身で申告しなければ対象になりませんので、注意してください。
また、薬局などで購入したセルフメディケーション税制対象商品の合計金額による医療費控除と、矯正治療など治療費による医療費控除は併用できません。
医療費控除でいくら戻ってくる?
医療費控除で控除される所得税は、支払った医療費の金額や所得によって異なりますが上限は200万円までです。税額は医療費控除額に各自の税率を乗じることになります。
では、実際いくらくらい戻ってくるのか、金額によって面倒な確定申告をするかどうかを決めたい方もいるでしょう。戻ってくる金額は、以下の計算方法で算出することができます。
年間医療費の合計額-保険金などの補てん金額-10万円(※)=医療費控除額(※200万円未満の場合 総所得額に5%をかけた数額を差し引き)
医療費控除額×所得税率 + 医療費控除額×住民税率 ? 還付税額
合計額から10万円を差し引いた金額に税率を乗じた金額がおよその金額ですが、生命保険などから補填金やお見舞金などが出ている場合はその分戻ってくる税金が少なくなります。
補填金やお見舞金を受け取っている場合は、確定申告にて医療費控除を行ってもほとんど還付されない可能性もあるので、まずは払った医療費と受け取った保険金をしっかり確認しておきましょう。
また、公的医療保険を適用した矯正治療などでは高額療養費制度も活用することができますが、高額療養費制度によって返金された費用も医療費控除では差し引く必要があります。
医療費控除で対象となる費用
「医療費10万円」には、歯科医院で支払った費用以外にかかった医療費等も一部含むことができます。治療費だけでは10万円に達していなくても、すべて含めたら超えるかもしれないのでこちらもよく確認しておきましょう。
診療でかかった費用
検査料、診断料、治療費、矯正装置費用、調整料、処置料など、歯科医院で払った治療費用全般
ただし、歯科医院で購入した歯磨き粉やうがい薬など矯正治療を行っていなくても購入する商品に関しては医療費控除の対象外となります。
医薬品代
治療のために必要な処方薬や市販薬代
矯正治療器具の痛みに対処するために購入した痛み止めなども対象です。
また、歯科医院で処方された薬ももちろん医療費控除の対象です。
交通費
通院の際に利用した公共交通機関(電車、バス、新幹線や飛行機)の費用
自家用車による通院でかかった駐車場代やガソリン代、タクシーなど公共の交通機関以外で通院した場合にかかる費用は対象外です。
ただし、事情により公共交通機関での通院ができない方の場合、深夜帯などで公共交通機関が利用できない場合などは医療費控除の対象となるケースもあります。個々によって異なるため、税務署へ問い合わせてみましょう。
デンタルローン、クレジット分割払いを利用した場合は?
デンタルローンやクレジットカードの分割払いを利用した場合も、医療費控除は適用されます。
ただし、デンタルローンを契約し、デンタルローン会社が歯科医院へ費用を支払った年に全額の申請が必要です。デンタルローン会社への返済のタイミングではないので注意しておきましょう。
また、デンタルローン会社へ支払う金利や手数料は医療費控除の対象外となります。
クレジットカードも同様に、引き落とし日に関わらず、「歯科医院でクレジットカードを使用して決済をした日」の年度で医療費控除の申請をする必要があります。
こちらも、分割払いの手数料は医療費控除の対象外なので注意してください。
大人の歯列矯正で医療費控除が対象となるケースは?
大人の矯正治療は、医療費控除の対象となるケースとならないケースがあります。 対象とならないケースでは、確定申告を行っても医療費が控除されないため、自身の矯正治療が医療費控除の対象かどうかを確認しておきましょう。
「治療目的」の矯正治療が医療費控除の対象
大人の歯列矯正で医療費控除の対象となるのは、矯正歯科の専門医に「治療」として矯正治療が必要と判断された場合です。
例えば、「歯並びが原因で上手く発音ができない」「噛み合わせが悪く、食べ物を噛み切ることができない」など、生命や日常生活に大きな支障をきたしている・きたす可能性がある状態には、改善のための治療として矯正治療を行います。
逆に見た目を美しくすることを目的とした矯正治療は医療費控除の対象となりません。
口元をきれいにしたい、芸能人のようなきれいな歯並びにしたいなどの場合は「治療」として必要な矯正治療ではないため、医療費控除を受けることができないとされています。
しかし、自分自身では機能的な問題はないと思っている場合でも、歯科医師の目から見て「治療」の矯正治療が必要だと診断されれば、医療費控除の対象となります。自分の歯並びや噛み合わせが対象となるか気になる方は、まずは矯正歯科で相談してみてください。
医療費控除の条件は矯正方法も関係ある?
医療費控除の条件として、矯正治療方法の制限は特にありません。医師に矯正治療が必要と判断されている前提があれば、大人の矯正治療で近年需要が高まっている目立ちにくいマウスピース矯正や歯の裏側に矯正装置をとりつける舌側矯正(裏側矯正)でも対象となります。
ただし、一般的な矯正治療にかかる金額よりもあまりに高額だと医療費控除を受けられないこともあります。新しい矯正治療方法や独自の治療方法では平均よりも高額となり医療費控除が適用されない可能性もあるので、事前によく確認しておきましょう。
診断書がなくても医療費控除は受けられるの?申請に必要なものは?
医療費控除は確定申告を行う必要があり、確定申告のためには必要な書類などがいくつかあります。
診断書なしで申請はできる!
医療費控除は、診断書がなくても申請できます。医療費控除の申請では医療機関から発行される診断書の提出は必須条件とされていません。
ただし、矯正治療はあくまでも「治療」のために矯正治療を受けた場合に医療費控除の対象となり、税務署が確認のために診断書の提出を求めることがあります。提出を求められた際に提出できないと、医療費控除が受けられないこともあります。
申請に必要なものは?
・確定申告書
・確定申告書に添付をする医療費控除の明細書
・申告する年の源泉徴収票
・申告する矯正歯科治療の領収書
・そのほか医療費控除の対象となる領収書
・デンタルローンの契約書または明細書
矯正治療費のほかに、別途受けた治療がある場合は合算して申請することができるので、医療費控除を申請する年のすべての治療の領収書を用意しておくとよいでしょう。
ただし、領収書の原本は確定申告書に添付しなくても大丈夫です。支払先や金額等をまとめた医療費控除の明細書を添付することとなります。
このほか、マイナンバーカードや確定申告に必要となる書類を用意しておきましょう。
領収書は、申請後も5年間の保管が義務付けられているため必ず保管してください。5年の間に税務署から領収書の提出を求められたら、提出する必要があります。
まとめ
大人の歯列矯正治療は、審美目的でなく治療目的の場合は医療費控除の対象となります。
歯科矯正は治療期間が長く、高額な費用がかかります。そのため、確定申告の際に医療費控除を申請することをおすすめします。