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アンカースクリューで顔は本当に短くなる?顔貌変化のメカニズムと期待できるケースを解説

アンカースクリューで顔は本当に短くなる?顔貌変化のメカニズムと期待できるケースを解説 監修 若菜 康弘 歯科医師の画像

アンカースクリューを使った矯正治療により、顔が短くなるなど顔貌に変化が生じる場合があります。この記事では「顔が短くなるとは具体的にどういうこと?」「本当に短くなるの?どんなメカニズムで?」など、アンカースクリューを使った矯正治療における顔貌の変化について詳しく説明します。

なお、アンカースクリューはあくまで「矯正治療の選択肢の一つ」で、顔貌の変化はその矯正治療における副次的なものです。歯並び・骨格・治療計画にも大きく影響を受けるため、誰もが期待通りの変化を得られるものではありません(変化・効果の程度もコントロールはできません)。

この記事の監修医師

若菜 康弘 歯科医師

若菜 康弘 歯科医師

  • 監修

鶴見大学歯学部大学院卒業。現在は、千葉県夷隅郡大多喜町にある若菜歯科医院の院長を務めています。

そもそもアンカースクリューとは?矯正治療での役割

そもそもアンカースクリューとは?矯正治療での役割の画像 そもそもアンカースクリューとは?矯正治療での役割の画像

アンカースクリューは、矯正治療において顎骨に一時的に埋め込む直径1~2mm・長さ6~10mm程度の非常に小さなチタン製のネジです。そもそも何のために埋め込むのか、どのような役割を果たすのかについて説明します。

強固な固定源(アンカレッジ)として、歯を効率的に動かす

アンカースクリューは、矯正治療を行う際の「固定源(アンカレッジ)」として大きな役割を果たします。歯茎の下にある顎骨(歯槽骨)に一時的に埋め込み、矯正装置を連結させて使用します。

一般的な矯正治療では、主に奥歯を固定源として、動かしたい歯に力を加えて少しずつ移動させていきます。しかしその反作用で、動かしたくない歯まで動いてしまうことがあります。アンカースクリューを顎骨に埋め込めば「動かない強固な固定源」となり、狙った歯だけを効率的かつピンポイントで移動させることが可能になります。

治療期間の短縮や複雑な歯の移動を実現できるだけでなく、「特定の歯だけ動かしたい」といった細やかなニーズにも対応できる可能性がある選択肢です。

従来の矯正法では難しかった歯の動きを可能に

従来のブラケット矯正(ワイヤー矯正)は、歯と歯をワイヤーでつなぎ、その引っ張り合いによって歯を動かしていました。動かしたい歯だけでなく、固定源とした歯も少なからず動いてしまうことがあり、歯を顎骨の中に沈める「圧下(あっか)」、歯を大きく「後退させる」といった三次元的な動きの実現は困難でした。

しかしアンカースクリューを用いることで、これらの複雑な歯の移動が効率よく確実に行えるようになりました。アンカースクリューによって治療の選択肢が広がり、より精密な治療が可能になったといえるでしょう。

アンカースクリューが顔を短く見せるメカニズム

アンカースクリューが顔を短く見せるメカニズムの画像 アンカースクリューが顔を短く見せるメカニズムの画像

アンカースクリューを用いた矯正治療は、歯の移動だけでなく顔貌にも影響を与える可能性があります。特に「顔が短く見える」という効果は、奥歯の圧下や噛み合わせの変化による下顔面高のバランスが関係していると考えられます。具体的なメカニズムを説明します。

奥歯(臼歯)の圧下による影響

アンカースクリューを用いた矯正治療において顔貌の変化、とりわけ「顔を短く見せる」ことに関わるのが、奥歯の圧下です。圧下とは、歯を歯茎の下にある顎骨に向かって沈める動きを指します。

アンカースクリューという強固な固定源を利用することで、従来では難しかった奥歯の圧下が効率的・計画的にできるようになりました。奥歯の圧下によって、微妙ではあるものの顔の縦のバランスが変化する(短くなる)というメカニズムです。

奥歯の圧下による噛み合わせの変化と顔の高さへの影響

奥歯が圧下されると、全体的な噛み合わせの高さが低くなります。上下の顎の関係性が変化し、特に下顎が前方かつ上方に回転する「オートローテーション」と呼ばれる動きが生じます。結果として鼻下から顎先までの距離(下顔面高)が短くなる効果が期待できます。

開咬(かいこう、オープンバイト)の改善とともに、顎先も前方に出るためEラインを改善できる可能性があります。また顔の縦の長さが抑えられ、引き締まった印象に変化することがあります。

ただし、奥歯の圧下によるオートローテーションは副次的なもので、もともとの垂直的な顎の位置関係にも影響を受けます。

顔が短く見えるのは、下顔面高のバランスが変わるため

アンカースクリューを使った矯正治療で「顔が短くなる」という表現は、顔全体の長さが物理的に縮むというよりも、下顔面高のバランスが変化することによるものと考えてよいでしょう。

上述のように鼻下から顎先までの下顔面高が短くなることで、顔の縦横の比率が調整されて面長な印象が和らぐといったイメージです。結果的に顔が短く、引き締まったように見える効果が得られる場合があります。

どんな歯並び・骨格の場合が顔が短くなる変化が期待できる?

どんな歯並び・骨格の場合が顔が短くなる変化が期待できる?画像 どんな歯並び・骨格の場合が顔が短くなる変化が期待できる?画像

「アンカースクリューを使った矯正治療で、顔が短くなる変化が期待できるかどうか」は、もともとの歯並びや骨格などに大きく左右されます。たとえば、奥歯を圧下したすべての方に同じような変化が起こるわけではありません。それではどういったケースで顔が短くなる変化を期待できるのか、具体的にご紹介します。

開咬(オープンバイト)など、縦方向の噛み合わせに問題があるケース

前歯が噛み合わない「開咬」の原因は、多くが奥歯の過剰な萌出(ほうしゅつ=生えすぎ・出すぎ)とされています。そのため治療においては、奥歯を圧下して噛み合わせを閉じる方法が用いられることがあります。

治療の過程で必然的に奥歯が圧下されるため、顔が短くなる変化が起こりやすいといえるでしょう。そもそも開咬の方は下顔面高が長い傾向があるため、奥歯の圧下により噛み合わせが改善されると同時に、下顔面高も短縮されて顔全体のバランスが改善する可能性があります。

下顔面高が大きいロングフェイス傾向のケース

治療前の精密な骨格診断でもともと下顔面高が長いと診断された方、いわゆる「ロングフェイス」の傾向がある方も、アンカースクリューによる奥歯の圧下が有効とされています。

ロングフェイスの方は下顎が下方・後方に成長している傾向があるため、アンカースクリューによる奥歯の圧下で下顎の位置が上方・前方に改善されると、顔貌のバランスが改善され短くなったように見える変化が期待できるというわけです。

ガミースマイルの治療などで歯の圧下が必要となるケース

笑ったときに歯茎が大きく見える「ガミースマイル」の治療で歯を圧下した場合も、顔が短くなる効果が期待できるでしょう。

一方で歯の圧下を含まない治療では、顔が短くなるといった変化は起こりにくいと考えられます。ガミースマイルの原因や治療方法について詳しくは、以下の記事で説明しています。

アンカースクリュー治療で起こりうるその他の顔貌変化

アンカースクリュー治療で起こりうるその他の顔貌変化の画像 アンカースクリュー治療で起こりうるその他の顔貌変化の画像

アンカースクリューを用いた矯正治療は、顔の縦の長さに影響を与えるだけでなく口元や横顔の印象にも変化をもたらすことがあります。こうした変化は、歯の動きが顔全体のバランスに影響を与えることで生じます。以下、具体的なケースをご紹介します。

口元(唇)の変化

アンカースクリューを使って前歯の位置や傾きを調整した結果、口元の突出感が改善される・唇の閉じ方が自然になるなどの変化が見られる場合があります。

特に前歯が前方に突出していた方は、アンカースクリューで前歯を後退させることで口元の膨らみが軽減され、口元がすっきりとした印象に変化する可能性があります。唇が自然に閉じるようになると、口呼吸から鼻呼吸への改善につながることもあります。

横顔(Eライン)や顎のラインの変化

アンカースクリューを使った矯正治療で歯並びや噛み合わせが整うと、Eラインにもよい変化が生じる可能性があります。Eラインとは、横を向いたときの鼻先と顎先を結んだラインに対する唇の位置をいいます。一般的に上下の唇がEライン上か、やや内側に位置するのが美しい横顔とされています。

また、アンカースクリューを使った矯正治療で下顎の位置が改善すれば、顎のラインがシャープになるなどフェイスライン全体の引き締め効果が期待できることもあります。

変化は歯の動き方や骨格によって様々

ここまでアンカースクリューを使った矯正治療の顔貌の変化について述べてきましたが、「アンカースクリューを使ったから顔が短くなる」といった短絡的なメカニズムではありません。

歯や顎骨全体が三次元的に動くといった複合的な要因により、「結果として」顔が短く見えるなどの変化が生じると考えておきましょう。顔の変化については個人差が大きく、必ずしも期待するような変化が得られるものではありません。

また期待ではなく、望まない変化が起こったらどうしようと「不安」な方もいるかもしれません。後悔しないためには、治療前の精密な診断と入念なカウンセリングが非常に重要です。

歯科医師とよくコミュニケーションをとり、「自分のケースではどのような変化が起こりうるのか」を理解しましょう。それでも不安が残る方は、セカンドオピニオンも検討することをおすすめします。

アンカースクリューによる顔貌変化を成功させるためのポイントと注意点

アンカースクリューによる顔貌変化を成功させるためのポイントと注意点の画像 アンカースクリューによる顔貌変化を成功させるためのポイントと注意点の画像

アンカースクリューは矯正治療の選択肢の一つで、顔貌の変化は結果を確約するものではありません。たとえば奥歯を圧下した場合も「このように変化する可能性がある」といったニュアンスです。

そのため顔貌の変化に対して過度に期待を抱かないほうがよいでしょう。また逆に、顔貌の変化が望まない結果になる可能性もゼロではありません。

これらを踏まえて「良い方向で顔貌の変化を得る可能性を高める」あるいは「望まない結果になるリスクを可能な限り減らす」にはどうすればよいのか、ポイントと注意点をまとめました。

精密な診断と治療計画が最も重要

アンカースクリューを用いた治療で、自分が期待する顔貌の変化を得る可能性を高める、あるいは望まない変化を可能な限り回避するためには、事前の精密な診断とそれに基づく治療計画が何よりも重要です。

たとえば、セファロと呼ばれるレントゲン写真を用いた精密な骨格診断が有用です。セファロで頭蓋骨と顎骨の位置関係、顔面の成長パターン、上下の顎のバランスなどを測定することで、歯の動きやそれがもたらす顔貌の変化などを科学的に予測できる可能性があります。また3D画像診断の技術を活用することで、従来よりも綿密な治療計画が立てられます。

こうした技術を活用しつつ歯並びを詳細に診断し、それらを総合的に評価した上での歯科医師による治療計画が重要です。

理想の顔貌について、遠慮なく歯科医師に伝える

アンカースクリューを使った矯正治療の結果、「自分が期待する顔貌の変化が得られる可能性があるのか」「望まない変化が生じるリスクがあるのか」などを気兼ねなく相談できるよう、信頼できる歯科医師を見つけることが大切です。

望まない結果が得られる可能性があるときは、アンカースクリューを用いない方法や外科矯正なども模索してもらえる歯科医師だと、より納得のいく治療が受けられるかもしれません。

※歯科医師はあくまで歯並びを改善し、患者さんのQOL(生活の質)を向上させる目的でアンカースクリューを使った矯正治療を行います。「期待する顔貌の変化」「避けたい顔貌の変化」を伝えた場合でも、必ずしもその要望を治療計画に反映できるとは限りません。場合によってはアンカースクリューを使った矯正治療ではなく、別の方法を検討するくらいの心構えがあったほうがよいでしょう。

期待できる変化には限界があることを理解する

アンカースクリューを用いた矯正治療で得られる顔貌の変化は副次的なものです。もともとの歯並びや骨格、噛み合わせなどに影響を受ける上に劇的な変化は期待できません。

また「上下の顎の大きさのバランスが著しく悪い」「顎の位置が大きく偏っている」といった方は、歯の移動だけでは限界があり外科的矯正(顎骨を切る手術)が必要になることもあります。年齢が高くなると骨の代謝が低下して、歯の動きが遅くなったり期待する変化が得にくくなったりする可能性もあります。

現実的な期待値を持つこと(過度な期待を抱かないこと)や、歯科医師から「何ができて、何ができないか」について十分説明を受けることなどが重要です。いずれにせよ歯科医師とは十分に話し合い、自分に合った治療方法・本当に納得のいく治療方法を選択しましょう。

まとめ

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アンカースクリューは奥歯の圧下を可能にし、開咬やロングフェイス、ガミースマイルなどの特定のケースにおいて下顔面高の短縮につながる可能性がある選択肢です。しかし顔貌の変化は個人の歯並び・骨格・治療計画などに大きく影響を受けるため、すべての人が得られる普遍的な効果ではありません。また期待する結果だけでなく、望まない結果になる可能性もあります。

もっとも重要なのは信頼できる歯科医師に相談し、自分の状態を精密に診断してもらうこと、予測される顔貌の変化について十分に話し合うことです。適切な診断と現実的な期待値を持った上で治療を開始するかどうか判断しましょう。場合によってはセカンドオピニオンを受けることもおすすめします。

若菜 康弘 歯科医師

若菜 康弘 歯科医師

監修医師からのメッセージ

アンカースクリューは、矯正治療の時に歯を動かす力の固定源を骨に直接埋め込んだスクリューに求める方法です。

この方法によれば、歯を支えとする従来の方法では難しいとされていた「奥歯を全体に引っ込めること」や「前歯を大きく後退させること」、さらには「垂直的な歯の移動」などへ対処することが可能です。また治療期間の短縮にもつながることが利点の一つです。

しかし、アンカースクリューを埋める骨の部分の感染やスクリューの脱落など欠点もあります。骨や口の中の環境あるいは全身の健康状態によりこの方法が適さない場合もあるため、矯正科医による問診やレントゲン診断など専門的な診断がとくに重要になります。

矯正治療を確実に行うことができるよう、治療を受ける前には担当医に不安に感じる点などぜひご相談ください。

以下のリンク先では、全国にある「アンカースクリューを使った矯正治療が受けられる歯科医院」「セカンドオピニオンを受け入れている歯科医院」をはじめ、さまざまな矯正治療を提供している歯科医院が探せます。納得のいく矯正治療を受けるためぜひお役立てください。

矯正歯科ネットプラス編集部

この記事の執筆者

矯正歯科ネットプラス編集部

矯正歯科ネットプラス編集部は、メディカルネットが運営する矯正歯科に特化した情報サイト「矯正歯科ネットプラス」で日々配信を行っています。

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