リテーナーだけ作りたい方のための完全ガイド!再製作の方法や費用を徹底解説!
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「リテーナーがなくなってしまった」「壊れてしまって、このままだと歯並びが後戻りしてしまうかも」――そんな不安を抱えていませんか?ご安心ください。リテーナーだけを再製作することは可能です。矯正治療を終えた方にとって、リテーナーは美しい歯並びを維持するための生命線です。
この記事では、「リテーナーだけ作りたい」というあなたの疑問を解消するため、リテーナーが必要になる理由から具体的な製作方法、気になる費用、注意点までを徹底解説します。
この記事の監修医師
宮島 悠旗 歯科医師
- 監修
愛知学院大学歯学部を卒業。東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了。東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野の助教授を務めたご経験もあり、現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランスの矯正歯科医として活躍しています。
専門は矯正歯科で、とりわけマウスピース型矯正、小児矯正、マルチブラケット、アンカースクリュー、光加速矯正装置などに精通しています。
なぜリテーナーだけが必要になる?考えられる理由
リテーナーは、矯正治療後の歯並びを維持・安定させるために欠かせない装置です。「紛失・破損した」「合わなくなった」など、リテーナーだけが新たに必要になる方は意外と多いもの。リテーナーだけ作りたいというニーズが生じる主な理由は、以下のようなケースです。
それぞれ具体的な状況も交えながら詳しく解説します。
過去の矯正治療後の紛失・破損
「矯正治療は終わったけれど、リテーナーをどこかに失くしてしまった」「不注意でリテーナーを割ってしまった」という方は意外と多いものです。リテーナーは日常的に取り外しを行うため、うっかり置き忘れたり、誤って踏んで破損させたりすることも珍しくありません。またペットが噛んで壊してしまったり、旅行先で紛失したりなど予期せぬトラブルも起こりやすいアイテムです。
リテーナーを装着できない時間が長くなるほど、せっかく矯正治療で整えた歯並びが後戻りするリスクが高まります。紛失・破損に気づいたら、できるだけ早く新しいリテーナーを作ることが重要です。
自己判断による使用中断後の再開希望
「歯並びが安定してきたと思い、自己判断で一時的にリテーナーの使用を中断した」という方が、数か月後に歯並びの変化に気づき、慌ててリテーナーの再使用を希望するケースもあります。
矯正治療後の歯は、骨の中にしっかりと定着するまでに時間がかかります。そのため、保定期間中にリテーナーを正しく使用しないと、元の歯並びに戻ろうとする「後戻り」が起こりやすくなります。
ごくわずかな後戻りであれば、当時のリテーナーでリカバリーできる場合もありますが、リテーナーは矯正治療後の歯並びに合わせて精密に作られているため、後戻りが進むと合わなくなる可能性が高いです。
後戻りの程度によってはリテーナーの再製作だけで対応できないこともあるため、早めに歯科医院を受診して口腔内の状態を確認してもらいましょう。早期の相談が後戻りを防ぐカギとなります。
他院での矯正治療後のリテーナー希望
矯正治療を受けたところとは別の歯科医院でリテーナーを製作したい、というニーズもあるようです。「引っ越し・移転などで通っていた歯科医院が遠くなった」「閉院してしまった」「途中で通うのをやめてしまったので、もともと矯正治療を受けていた歯科医院には行きづらい」などのケースが考えられます。
このような場合、新しい歯科医院でリテーナーを製作することは十分可能です。矯正は長期的な治療なので、その間にライフスタイルや歯科医院側の事情が変わることも珍しくありません。
ただし、過去の矯正治療や口腔内の情報が不足していると、スムーズな対応が難しいこともあります。再製作を依頼する際は必要な情報や資料を事前に整理し、可能であれば以前の歯科医院に連絡してみるとよいでしょう。
マウスピース矯正後のリテーナーのみ希望
マウスピース矯正を終えて保定期間に入る際、リテーナーのみを希望する方もいます。マウスピース矯正は、透明なマウスピース型矯正装置を段階的に交換して歯を動かします。治療後は歯が安定するまで、後戻りを防ぐための保定が必要です。この保定期間に使用するのがリテーナーです。
矯正治療で使用したマウスピースではなく保定専用のリテーナーが必要になるため、治療後に「リテーナーだけ作りたい」と相談する方が多いようです。
リテーナーだけを作ることは可能なのか?
リテーナーだけを作ることは基本的に可能です。過去に矯正治療を受けた方や、紛失・破損などでリテーナーを必要とする方のために再製作を受け付けている歯科医院もあるので、まずは問い合わせてみましょう。
※重要※
リテーナーを再製作したい理由が「後戻りで合わなくなった」「しばらく装着していなかった(後戻りしていると思われる)」という場合、そのままでは【後戻りした状態の歯列でリテーナーを作る】ことになってしまいます。人によってはリテーナーを作る前に、矯正直後の歯列まで整え直す必要が生じることもあります。いずれにせよ、歯科医院にはできるだけ速やかに相談しましょう。
リテーナーだけ作る際のポイント
リテーナーの製作は可能ですが、スムーズに進めるためにはいくつかのポイントがあります。事前に準備しておくべき情報や、歯科医院で確認されることなどを理解しておくと、よりスムーズにリテーナー製作を進められます。
歯科医院への正確な情報伝達
過去の矯正治療に関する情報(治療時期や歯科医院、治療内容、使用していたリテーナーのタイプなど)は正確に伝えましょう。当時の記録(診断書や写真など)があれば持参するのがおすすめです。新しい歯科医院はあなたの情報を持っていません。こちらから情報を提供することで、歯科医師が治療履歴や口腔内の状態を正確に把握でき、適切なリテーナーの設計・製作につながります。
口腔内の状態の確認
現在の歯並びや噛み合わせによっては、リテーナー製作前に精密検査が必要になることがあります。特に、使用を中断していた期間が長く歯並びに変化がある場合は、単に以前と同じリテーナーを作るだけでは対応できないことも。そのような場合、歯科医院ではレントゲン撮影や口腔内スキャンなどを行い、現状を詳細に確認した上で最適なリテーナーを提案してくれるはずです。
リテーナーだけを作るための具体的な方法
一般的に、リテーナーは以下5つのステップで再製作できます。流れを理解しておくと事前の準備などもスムーズに行えて効率的です。
ステップごとに詳しく解説します。
ステップ1:まずは歯科医院への相談
まずはリテーナーの再製作をお願いしたい歯科医院に相談しましょう。「リテーナーだけ作りたい」という希望をはっきり伝えた上で予約を取ることが大切です。予約を取る際は「当日何を持参すればよいか」も確認しておくと安心です。
予約時に特に何も言われなかった場合でも、過去の矯正治療について質問されることを想定して治療を受けた時期・歯科医院名(または歯科医師の名前)・使用した矯正装置の種類や具体的な治療内容など、覚えている範囲で情報を整理しておくとスムーズです。また使用していたリテーナーが手元にあれば、持参するとよいでしょう。
ステップ2:歯科医院での検査・診断
歯科医院では、現在の口腔内の状態を確認するための検査が行われます。具体的には、歯並びや噛み合わせのチェック、リテーナー製作に必要な歯型採取などが挙げられます。これらの検査は単にリテーナーを作るためだけでなく、現在の歯並びがどうなっているのか、後戻りが生じていないかなどを正確に判断し適切なリテーナーを作るために重要です。
なお歯列が大きく後戻りしており現状ではリテーナーが作れない場合は、改めてどうするか(矯正治療をやり直すか)を歯科医師と話し合うことになるでしょう。
ステップ3:リテーナーの種類と選択
検査の結果リテーナーの再製作が可能と判断されたら、次はリテーナーの種類を選ぶことになります。一般的には、透明で薄く見た目への影響が少ないマウスピース型、丈夫な金属素材で調整が可能なワイヤー型、歯を覆わないプレート型などがあり、特徴が異なります。
- マウスピース型(アライナー型):薄くて透明なプラスチック製。装着時の違和感が少なく目立ちにくいのが特徴。審美性を重視する方におすすめ。
- ワイヤー型(ホーレータイプなど):金属ワイヤーとプラスチックでできており、丈夫で微調整が可能な場合も。やや目立つが耐久性には優れている。
- プレート型(ベックタイプなど):プラスチック製のプレートにワイヤーが付いたタイプ。着脱は可能だが歯列の状態によっては保定力が劣る場合がある。
ステップ4:リテーナーの製作と受け取り
検査した歯型データや選択したリテーナーの種類などをもとに、歯科医院または歯科技工所などでリテーナーが製作されます。製作期間の目安は通常だと数日〜数週間程度です。
リテーナーの完成を待つ間、少しでも後戻りのリスクを抑えるための方法があれば聞いておくことをおすすめします。正しい姿勢を意識すること、口腔習癖を抑えることなども大切になるでしょう。場合によっては、ナイトガード(就寝時に装着するマウスピース)が効果的な方もいるかもしれません。
完成したリテーナーを受け取る際は、装着方法やお手入れ方法、使用上・保管上の注意点などをしっかり確認しましょう。正しい使い方を守ることが歯並びの維持に大きく役立ちます。また不明な点があればこの場で質問し、疑問を解消しておくことも大切です。
ステップ5:アフターケアと定期的なチェック
リテーナーは整った歯並びを維持・安定させるために欠かせない装置です。歯科医師から指示された装着時間を守り、毎日丁寧にお手入れをしましょう。お手入れを怠るとリテーナーに汚れが溜まり、虫歯や歯周病の原因となることもあります。
また定期的に歯科医院を受診して、リテーナーの状態や歯並びのチェックを受けることもおすすめします。リテーナーに破損や変形が見られる場合や、歯並びに変化を感じた(リテーナーが合わないと感じた)場合などは使用を中断し、速やかに歯科医師に相談しましょう。
リテーナーだけを作る際の注意点
リテーナーだけを作るにあたっての注意点をまとめました。スムーズに進めるためにも、以下の項目を確認しておきましょう。
保険適用外となる場合が多い
リテーナーの費用は、一般的に公的医療保険の適用外です。矯正治療は自由診療であることが多く、その自由診療に含まれるリテーナーも同様の扱いとなるためです。費用は全額自己負担になることを念頭に置いておきましょう。
また歯科医院によって料金体系が異なるため、予算に限りがある方は事前に確認しておくことも大切です。費用面で不安がある方は、複数の歯科医院に相談し見積もりを比べてみるとよいでしょう。
過去の矯正治療の情報が必要になる場合がある
リテーナーを再製作するため、過去の矯正治療に関する情報(治療期間・治療した歯科医院または歯科医師・使用した装置など)を求められることがあります。できる範囲で思い出しメモしておくとスムーズです。万が一情報が手元にない場合でも、その旨を歯科医師に正直に伝えましょう。
自己判断での製作はリスクがある
ネットショップで既成のリテーナーを見かけたり、自分で型取りをするタイプの製品を見つけたりしても購入することは控えてください。適切な診断を受けずに使用すると、かえって歯並びや噛み合わせを悪化させたり、顎関節に負担をかけたりするリスクがあります。しかも誰も責任が取れません。リテーナーは必ず歯科医師の診断のもと、専門的な製作プロセスを経て作りましょう。
歯科医院によって費用が異なる
リテーナーの料金は歯科医院によって設定が異なるほか、マウスピース型やワイヤー型など選択肢によっても変わります。費用面が気になる方はいくつかの歯科医院に相談して、見積もりを比較するとよいでしょう。
またリテーナーそのものの費用だけでなく、歯科医院ごとのサービス内容も比較・検討することをおすすめします。新しく製作したリテーナーにトラブルが生じた際に、どのような対応をしてもらえるのか等も含めて確認し、納得できる歯科医院を選びましょう。
リテーナーだけ作る際の費用相場
リテーナーの費用は種類や歯科医院によって異なりますが、一般的には片顎あたり数千円~数万円程度が目安となります。また初診料や検査料が別途かかる場合もあるため、事前に歯科医院に確認することをおすすめします。
| リテーナーの種類 | 費用相場(上下顎) |
|---|---|
| マウスピース型 | 10,000〜20,000円程度 |
| ワイヤー型 | 20,000〜60,000円程度 |
| プレート型 | 20,000〜60,000円程度 |
※矯正歯科ネットプラス調べ
まとめ
過去の矯正治療後の紛失・破損、自己判断による使用の中断、他院での治療後の希望、マウスピース矯正後の保定などリテーナーが必要になる理由はさまざまです。いずれにしても、リテーナーは矯正治療後に整った歯並びを維持・安定させるために欠かせない装置なので、再製作が必要な方はできるだけ早く歯科医院に相談しましょう。
歯科医師の診断のもと自分に合ったリテーナーを手に入れたら、正しく使用するとともに、歯科医院でも定期的にチェックを受けて美しい歯並び・理想の笑顔をキープしましょう。
宮島 悠旗 歯科医師
監修医師からのメッセージ
リテーナーは歯並びを安定させるための大切な装置です。紛失や破損、後戻りに気づいたら、できるだけ早めに歯科医院に相談を。再製作は可能ですが、状態によっては調整が必要になることもあります。自己判断せず、専門家の指導のもとで進めましょう。
矯正治療前の歯並びやどのように歯を移動させたかによって適したリテーナーが違うこともあるので、矯正治療を行った歯科医院に連絡を取った方が良い場合もあります。
リテーナーの相談ができる歯科医院・信頼できる歯科医院をお探しの方は、以下のリンクから手軽に探すことができます。
また以下のリンク先では、この記事でお伝えしきれなかったリテーナーに関するよくある質問をQ&A形式でまとめているので、あわせてご覧ください。
宮島 悠旗 歯科医師
監修医師が答える!
「矯正治療後リテーナーはどのくらい使用するべき?」
リテーナーの作り直しを発生させないためには、歯並びの後戻りを起こさないことが重要です。「きれいな歯並びを保つために矯正治療後リテーナーはどのぐらい使用するべきか」という質問がよくありますので、それに対する答えをまとめておきます。
・保定開始から1年間は1日20時間
・保定1年以降は毎日12時間程度
・保定2年は毎日夜間8時間程度
・保定3年以降は2日ごとに夜間8時間程度
・保定4年以降は週2回夜間8時間程度
・保定5年目以降は週1回夜間8時間程度を生涯使用する必要があります。
一般的によく言われている「動的治療期間と同じ期間リテーナーを使用すればもうリテーナーを使用しなくても良い」とか、「〇年使用すればもう使用しなくても良い」というのはなんの根拠もありません。
歯間水平線維の影響や不正咬合の原因となった機能的な問題が完全に改善されていない限り、矯正治療終了後期間が経つ程歯が動きにくくはなりますが、必ず歯は後戻りします。