【ガミースマイルの原因を解説】遺伝でも根本から治療できる?
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ガミースマイルの原因は「口唇」「歯茎」「歯」「骨格」いずれかに問題があるケースに大別でき、複数の要素が存在することもあります。また子供に遺伝することもありますが、いずれにせよ適した治療方法を選択すれば改善できる可能性があります。
そのためにも、まずはガミースマイルの原因をはっきりさせることが大切です。本稿ではガミースマイルの原因と、どこで診断してもらえばよいのか、どのような治療の選択肢があるのかを解説していくのでぜひ参考にしてください。
この記事の監修医師
田中 麻紀 歯科医師
- 監修
2000年に大阪歯科大学卒業。大阪大学にて研修医過程終了の後、歯科医師の経験を積み、2009年にたなか歯科クリニックを開業。現在は、医療法人櫻陽会たなか歯科クリニック理事長兼院長として、一般歯科・審美的歯科治療・インプラント治療を中心に行っています。
ガミースマイルと診断される状態とは?
ガミースマイルには明確な定義・基準がありませんが、一般的には「笑ったときに歯茎が3mm以上見える状態」を指すことが多いようです。骨格に先天的な異常があるといった場合を除き、ガミースマイルは病気ではないため気にする・気にしないも本人の価値観によるところが大きいでしょう。
ただ、チャーミングで明るい・活発といった印象を与えることがあるガミースマイルですが、見た目が気になり人前で笑うことが怖いなどコンプレックスに感じる方もいます。
また、ガミースマイルによって口を開け閉めしづらい方は口呼吸になり、口腔内が乾燥しやすくなってしまうことも。乾燥した口腔内では唾液による自浄作用や抗菌作用が十分に機能せず、虫歯や歯周病といったリスクも高まってしまいます。
病気ではないとはいえ、見た目や口腔内の環境悪化などが気になる方は矯正歯科を受診し、原因をはっきりさせるとともに適した治療を受けることも検討しましょう。
ガミースマイルの原因
ガミースマイルの方は「口唇」「歯茎」「歯」「骨格」のいずれかに問題があることほとんどです。具体的な原因について掘り下げて解説します。なおいずれのケースも両親や祖父母からの遺伝という可能性もあります。
口唇に問題がある
原因 | なぜ? |
---|---|
上唇が薄い | 笑ったときに上唇が引き伸ばされてさらに薄くなるため、歯や歯茎が大きく露出する |
上唇挙筋が強い | 笑ったときに上唇が引き上げられすぎてしまうため、歯や歯茎の露出が増える |
上唇が薄い(縦幅が狭い)と、笑ったときに口角が上がって上唇が横に引き伸ばされ、さらに薄くなることで歯や歯茎が露出しやすくなります。また口周りの筋肉、とりわけ笑ったときなどに上唇を引き上げる上唇挙筋の力が強いと、上唇が過剰に引き上げられて歯や歯茎が大きく露出します。上唇の粘膜を切除して唇を厚くしたり、ボトックス注射で上唇挙筋を緩めたりして改善を試みることができます。
歯茎に問題がある
原因 | なぜ? |
---|---|
歯茎が過剰に発達している | 歯茎が歯に覆いかぶさるほど発達していると、笑ったときに歯の見える面積が狭くなり相対的に歯茎が大きく見える |
歯肉が過剰に増殖している | 歯肉増殖症や歯肉肥大などと呼ばれ、歯肉の面積が大きくなることから笑ったときに露出しやすくなる |
歯茎の過剰な発達により歯の根元部分が隠れている場合、歯茎の面積が広くなる上、露出する歯の面積も狭くなるため、余計に歯茎が目立ってしまいます。単純に、歯茎のみが過剰に増殖してしまうこともあれば、歯並びや骨格など複合的な問題が原因ということもあります。この場合は、歯茎を切除するといった方法で改善を試みることができます。
歯に問題がある
原因 | なぜ? |
---|---|
歯が短い | 笑ったときに見える歯の面積が小さい分、相対的に歯茎が目立つ |
上顎の前歯が 出すぎている(出っ歯) |
笑ったときに歯に沿って上唇が持ち上がり、歯茎が露出しやすくなる |
上顎の前歯が 通常以上に伸びて生えている (歯が低い位置に生えている) |
下の前歯に覆いかぶさるように生えているため、露出する歯茎の面積も大きくなる |
上顎の前歯が 舌側に生えている |
上顎の切歯(前歯)が正常よりも舌側に生えており、その部分の歯茎の露出が増える |
歯に問題があってガミースマイルになっている方は、こうした原因が考えられます。単純に歯が通常よりも短いという理由で相対的に歯茎の露出面積が大きく見えることもあります。
骨格に問題がある
原因 | なぜ? |
---|---|
上顎前突 | 上顎が前に出ているため、笑ったときに通常よりも歯や歯茎が露出しやすくなる |
過蓋咬合 | 前歯のかみ合わせが深い(上の前歯が下の前歯に覆いかぶさる)ため、上の歯茎の露出面積も大きくなる |
上顎の骨が縦に長い | 通常よりも上顎の骨が長いため、笑ったときに露出する歯茎の面積が大きくなる |
上顎の骨が前に出ている(出っ歯)、下前方に出ていて上の前歯が下の前歯に覆いかぶさっている(過蓋咬合)、上顎の骨が縦に長いなど骨格に問題があるとガミースマイルになることがあります。この場合は骨切りなどの外科手術および矯正治療との組み合わせなどによって改善を目指すことができます。
女性に多いとされる理由・原因は?
ガミースマイルは女性に多いといわれることもあります。たとえば男性が7%程度であるのに対し、女性は14%程度がガミースマイルであるといった具合です。しかしながら、それを示す具体的なデータや確かな医学的根拠はありません。したがって「女性に多い」とは断言できないでしょう。
ただ女性に多い「印象」はあるかもしれません。その理由・原因として口周りの皮膚が柔らかい、上唇が薄いといった可能性が考えられますが、いずれも女性特有ではないため、やはり「女性に多いという根拠はない」というのが結論になります。
ガミースマイルの根本療法と対症療法
ガミースマイルには根本療法(原因療法)と対症療法があります。代表的な治療と、どういった原因に対応しているのかをまとめたので参考にしてください。なお複合的な要因でガミースマイルになっている場合、いくつかの治療方法を組み合わせることがあります。
またガミースマイルの治療は原則として自由診療となるため、公的医療保険は適用外です(※1)。費用も医院やクリニック、治療方法によって大きく異なります。また以下に紹介する治療方法を組み合わせることもあります。
※1:上顎前突などと診断され、かみ合わせ改善のために矯正治療が必要な場合などは公的医療保険が適用されることもあります。
根本療法の例
治療方法 | 概要 | 適用例 |
---|---|---|
上唇粘膜切除術 | 上唇の内側と歯茎の間の粘膜を切除して縫い合わせることで、笑ったときなどに上唇が引き上げられる幅を狭めることにより歯茎の露出を抑える(上唇内側の粘膜を短くすることで上唇が少し厚くなる) |
● 上唇が薄い ● 上唇挙筋が強い |
骨切り手術 | 前突している、縦に長いといった顎の骨を切除して(引っ込めて)歯や歯茎の露出を抑える |
● 上顎前突 ● 過蓋咬合 ● 上顎の骨が縦に長い |
歯肉整形 | 過剰に発達・増殖した歯茎を切除し、歯の露出面積を増やすとともに歯茎の露出を抑える | ● 歯茎が歯に覆いかぶさっている(歯茎が発達・増殖している) |
セラミック治療 | 歯にセラミックをかぶせて縦に長くし、相対的に歯茎が露出している印象を弱める(歯肉整形・歯冠長延長術と併用することもある) |
● 歯が短い ● 歯茎が歯に覆いかぶさっている(歯茎が発達・増殖している) |
歯列矯正 (アンカースクリュー) |
歯を正しい位置に動かすことで歯と歯茎が過剰に露出しないよう整える(上の前歯が通常異常に伸びて生えているときは、アンカースクリューを使用して歯を歯槽骨に圧入する) |
● 上顎の前歯が出すぎている(出っ歯) ● 上顎の前歯が通常以上に伸びて生えている ● 歯が低い位置に生えている ● 上顎の前歯が舌側に生えている |
歯冠長延長術 | 歯に覆いかぶさっている歯茎を切除し、歯槽骨の高さ・幅などを整えることで歯の露出面積を増やすとともに歯茎の露出を減らす(上唇粘膜切除術やセラミック治療と併用することもある) |
● 歯が短い ● 歯茎が歯に覆いかぶさっている(歯茎が発達・増殖している) |
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ガミースマイルを根本から改善したいときは、上記のような治療方法が選択肢となります。適用例については一例で、複合的な要因がある場合は別の治療方法を提案されたり、いくつかの治療方法を組み合わせたりすることもあります。
また上記で挙げた治療方法のうち、歯肉整形は歯茎の増殖とともに後戻りすることがあります。同じように歯茎を切除する治療方法でも、歯冠長延長術のほうが後戻りしづらいとされています。この点も踏まえ、カウンセリングで詳しく聞いてみることをおすすめします。
対症療法の例
治療方法 | 概要 | 適用例 |
---|---|---|
ボトックス注射 | 筋弛緩作用のあるボトックス注射を打つことで、上唇が大きく引き上げられてしまうのを防ぐ(上唇粘膜切除術と併用することもある) | ● 上唇挙筋が強い |
ガミースマイルの対症療法として代表的なのがボトックス注射です。筋弛緩作用があるため、上唇挙筋が強すぎて笑ったときに上唇が大きく引き上げられてしまう方に向いています。ただし根本療法ではなく持続期間も4?6か月などと短いため、ボトックス注射のみで改善を図りたいときは定期的に治療を受ける必要があります。
ガミースマイルの治療における注意点
ガミースマイルの原因は様々で、複数の要因が重なっていることもあります。とくに骨格や歯に問題がある場合は対症療法を選択しても改善が難しいため、まずは矯正歯科などの歯科医院を受診して原因を特定してもらうことをおすすめします。
また歯列矯正や骨切り手術といった外科手術を受ける場合、将来的な口腔機能への影響の有無(リスクなど)も必ず確認し、納得した上で治療を始めることが大切です。
ガミースマイルは子供に遺伝する?
両親や祖父母がガミースマイルだった場合、粘膜や筋肉、歯や骨格などの要素が遺伝して子供がガミースマイルになることもあります。ただし遺伝以外にも、例えばおしゃぶり(指しゃぶり)や舌の癖などが原因で出っ歯になり、結果としてガミースマイルになることもあります。
子供の場合はどのような治療方法がある?
治療方法 | 概要 |
---|---|
ヘッドギア | 子供用のヘッドギアを装着し、上顎の過剰な成長を抑えるとともに下顎とのバランスを整える。とくに出っ歯が原因のガミースマイルを治療する際に用いられる |
歯列矯正 (マウスピース矯正) |
上の前歯が下の前歯に覆いかぶさるように生えている過蓋咬合が原因の場合に用いられることが多い。全体的な歯列矯正と併せて行うことも |
MFT (口腔筋機能療法) |
咀嚼・嚥下・発音・呼吸などにおける舌や唇の位置を改善するトレーニング。指しゃぶりや舌の癖などが原因でガミースマイルになってしまった子供の治療方法に用いられることが多い |
症状の度合いや原因によっては別の治療方法を提案される可能性もありますが、子供のガミースマイルに対しては上記に挙げたような治療方法が代表的です。
子供のガミースマイルの治療はいつから始める?
治療の開始時期はガミースマイルの原因や治療方法によっても異なりますが、たとえば矯正治療の場合、一般的に永久歯に生え変わる6?7歳頃に治療を開始するとよいといわれています。
子供の成長や症状の度合いなどによって適した治療方法やタイミングも変わるため、まずは矯正歯科などの歯科医院を受診して説明を受けた上で、治療開始時期を相談することをおすすめします。
まとめ
ガミースマイルの原因は「口唇」「歯茎」「歯」「骨格」のいずれかにあることが多く、子供に遺伝することもあります。「人前で笑うことが恥ずかしい」などコンプレックスに感じていたり、日常生活を送る上で不便を感じていたりするのであれば、一度矯正歯科を受診して詳しく診断してもらいましょう。