子供の歯科矯正は必要?始める時期や費用、補助金なども解説!
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近年、「子供の歯並びが気になる」や「矯正を考えているけど費用が心配」など、子供の歯科矯正に関する悩みを抱える保護者が増えてきています。 そこでこの記事では、子供の歯科矯正の概要や矯正にかかる費用、歯科矯正に使える補助金制度などについて解説します。
この記事の監修医師
安藤 雄基 歯科医師
- 監修
愛知県名古屋市で歯科・小児歯科・矯正歯科・歯科口腔外科に加え、美容皮膚科の診療も行う「あんどう歯科・美容皮フ科」を2023年に開院。一般歯科・審美的な歯科治療、子どもの口腔機能に着目した小児矯正を得意としています。美容皮膚科と連携をとりながら、健康と美を求める患者さんのサポートを目指しています。
子供の歯科矯正は必要?
子供の歯並びや嚙み合わせが悪いと、将来的に虫歯になりやすかったり、硬いものを食べられない、見た目のコンプレックスを持ちやすいなどのさまざまなデメリットがあります。
幼少期は顎の骨が成長過程にあるので柔らかく、動きやすいうちに顎を広げたり嚙み合わせを改善することが可能です。この時期から歯科矯正を始めることで、大人の歯が生えてきたときに歯並びがよくなり、虫歯のリスクも減らせます。
子供の頃から歯科矯正を行うことは、将来のためにもとても重要だと言われています。
子供の歯は、5歳頃から大人の歯に生え変わり始めます。いずれ全ての歯が生え変わるのに子供の頃からの歯科矯正には意味があるのかと考える人もいるでしょう。
以下では、子供の歯科矯正が必要な症例について、歯並びが悪くなる原因とともに解説します。
歯並びが悪くなる原因
子供の歯並びが悪くなる要因は複数あります。幼い頃の指しゃぶりや頬杖、就寝中の口呼吸は、その原因として挙げられます。これらの癖がある場合は早めに改善しましょう。
また、生まれつき顎の骨格が狭いことで歯の生えるスペースが足りず、歯が重なって生えてしまうこともあります。逆に、歯の本数が少ないと隙間ができるなど、歯並びが悪くなる原因はさまざまです。
歯科矯正が必要な症例
子供のうちから歯科矯正が必要な症例には、以下があります。
【開咬】
奥歯を咬み合わせた時に前歯が咬み合わず開いてしまう状態です。
【受け口】
下の歯列が上の歯列より前に出ている状態です。
【出っ歯】
上の前歯が突出している状態です。
【乱杭歯】
歯が重なり、でこぼこに生えている状態です。
受け口や出っ歯などは骨格上の問題が大きく、大人になってからの矯正治療は難易度が上がります。
また、子供の時から歯並びが悪いと、将来噛み合わせが悪くなったり見た目のコンプレックスにつながる可能性もありますので、上記の症例に当てはまる場合は、幼少期からの歯科矯正を検討しましょう。
子供のうちに歯科矯正することのメリット
大人になってから歯科矯正をする方も多いですが、子供のうちに歯科矯正することにはさまざまなメリットがあります。どうして子供のうちに歯科矯正を行うのがよいのか、メリットをいくつかご紹介します。
癖を改善できる
矯正することで、歯並びを悪化させる癖を改善できます。前述の通り、指しゃぶりや口呼吸、頬杖などの癖は、歯並び悪化の要因です。また、睡眠障害を起こしやすくなります。
口呼吸があると過換気となり、血中の二酸化炭素が少なくなります。すると全身の毛細血管が収縮し、脳や全身の細胞に十分に酸素が行き渡らなくなります。さらに、下顎が後退位となり気道を狭窄させ呼吸が効率よく行われないことがあります。
そのため、口呼吸のある子は睡眠中に酸素不足に陥り、良好な睡眠が取れず以下の症状などにつながります。
・目の下のクマ
・歯ぎしり(息苦しい証拠)
また、睡眠中の放出される成長ホルモンの濃度が下がり、脳の発達、顎顔面の成長発育、全身の筋肉と骨の成長発育に影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、早期の改善が必要であり、子供のうちに歯列矯正を行うメリットは大きいといえるでしょう
顎の骨の成長期に矯正できる
成長期の顎の骨は柔らかいため、動きやすく、骨格の改善余地があるというメリットもあります。
顎が狭いと歯が内側または外側に重なって生え、歯を整列させるために抜歯が必要な場合もあります。骨が柔らかいうちに顎を広げることで、抜歯を行わずに治療を終えられる可能性が高まるでしょう。
また、大人になってからだと、骨格の矯正には外科的手術が必要になることがあるため、子供のうちに顎の骨のバランスを整え、顎を広げておくことは大切です。
虫歯リスクを減らせる
歯がきれいに並ぶことで歯磨きがしやすくなり、虫歯リスクを減らせるというメリットもあります。
歯並びが悪いと、歯ブラシの当たらない箇所が生まれ、磨き残しのリスクが増えます。その一方で、歯並びが揃えば歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを減らせるでしょう。
また、歯科矯正中は定期的に通院をするため、虫歯があっても早期の治療が可能です。虫歯や歯周病のリスク低下は、将来的な抜歯を減らし、歯の本数維持にもつながります。
子供の歯科矯正を始める時期とは?
子供の歯科矯正はいつから始めるのか、よい時期はいつなのか、などの悩みをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。子供の歯科矯正の適切な開始時期や期間を解説します。
一期治療と二期治療
子供の歯科矯正は、歯や顎の成長を考慮しながら治療を行います。そのため、矯正治療を開始する時期に応じて、「一期治療」と「二期治療」に分けられます。
乳歯と永久歯が混在する時期に行う矯正が「一期治療」、永久歯が揃った時点で行う矯正が「二期治療」です。
子供の歯や顎は柔らかく動きやすいですが、成長するにつれて動かしにくくなります。一期治療をすることで二期治療が不要となるケースもありますが、多くは一期治療と二期治療をセットで行います。歯の状態や悩みによって、それぞれに適した開始時期を歯科医師と相談しましょう。
矯正にかかる期間
一期治療は、5歳から11歳頃まで永久歯が生え揃うまでを目安に行います。主に行われるのは、二期治療に備えるために顎を拡げる治療です。
二期治療は、永久歯の生え揃う12歳頃から17歳頃までの期間で約2〜3年かけて行います。器具を使ってじっくりと歯を動かし、きれいに並べる治療です。症例にもよりますが、歯科矯正を完了するには一期治療と二期治療を合わせて約5〜10年程度は必要です。
子供の歯科矯正装置の種類
子供の歯科矯正装置は、可撤式矯正装置と固定式矯正装置に分けられます。それぞれ矯正方法が異なるためその違いを確認しましょう。
可撤式矯正装置
可撤式矯正装置とは、取り外しが可能な矯正装置です。主に、一期治療で顎を広げるために用いられます。歯が生え揃う前にスペースを作れるため、その後の抜歯を減らすことが可能です。
また、取り外しが可能であるため、食事や歯磨きの際に外せるというメリットもあります。
一方で、自由に取り外せるため付け忘れがあったり、使用時間が少ないと治療完了までに時間を要すことが注意点です。
二期治療においても使用されることがありますが、可撤式矯正装置にはいくつかの種類があり、子供の年齢や症状に合った種類の装置を使います。
固定式矯正装置
固定式矯正装置とは、歯に矯正器具を直接付ける矯正装置です。取り外しができないため、磨き残しが増えて虫歯になる可能性や矯正装置が目立つという点がデメリットです。
また、固定装置をつけている間に虫歯になると、装置を一度外す必要があるなど、時間も費用もかかります。子供が歯磨きをした後に、磨き残しがないかを確認してあげることが必要です。固定式矯正装置は種類が豊富にあるため、子供の年齢や症状に合わせて選ぶことが大切です。
子供の矯正にかかる主な費用
「子供の歯並びが気になる」「歯列矯正をしてあげたい」と考えた際に、気になるのが費用ではないでしょうか。
一般的に歯科矯正は保険適用外で自費負担です。かかる費用は、治療方法や使用する矯正装置などに応じても変わります。また、矯正が終わっても口の健康を守るためには定期的な検診が欠かせません。
そこで以下では、子供の歯科矯正にかかる費用の目安を時期や装置別にご紹介します。
一期治療にかかる費用
一期治療にかかる費用は、30〜50万円程度が相場です。症例に応じて使用する装置が異なるため、費用に幅があります。一期治療に用いられる矯正装置ごとの費用相場は以下のとおりです。
矯正装置 | 費用相場 |
---|---|
床装置 | 200,000〜300,000円 |
急速拡大装置 | 30,000〜50,000円 |
フェイシャルマスク | 400,000円 |
マイオブレース | 200,000〜400,000円 |
ペンデュラム | 35,000〜50,000円 |
リンガルアーチ | 30,000〜50,000円 |
ムーシールド | 30,000〜50,000円 |
バイオネーター | 30,000円 |
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上記の通り、使用する矯正装置に応じて費用は大きく変わりますが、症状が重い場合、何台もの装置交換が必要になることもあります。
一期治療は、骨や顎の成長コントロールが目的であり、骨や顎の状態を見て最適な装置を選ぶことが大切です。
二期治療にかかる費用
二期治療にかかる費用は、約30万円〜100万円程度が相場といえます。二期治療では、生えた歯の歯列矯正を目的としています。代表的なものとして、ワイヤー矯正とマウスピース矯正が挙げられます。
ワイヤー矯正とは、歯の表面または裏側に矯正装置を装着し、ワイヤーの力を使って歯を少しずつ動かして矯正する方法です。治療範囲が広く、さまざまな症例に対応しており、費用相場は50〜150万円程度です。また、表側矯正より裏側矯正の方が費用は高い傾向にあります。
マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを装着して歯を動かす治療法です。素材が透明のため目立ちにくく、取り外し可能というメリットがあります。
一方で、装着時間が短くなると矯正に時間がかかるという注意点もあります。マウスピース矯正にかかる費用相場は50〜80万円程度で、ワイヤー矯正ほどはかからない傾向です。
治療後にかかる費用
これまでに解説したとおり、子供の歯科矯正は一期・二期合わせて約100万円ほどかかるとされています。また、矯正を終えた後も口の健康を維持するためには定期的な検診が欠かせません。
矯正装置を外した後は、リテーナーと呼ばれる保定装置を装着し、後戻りを防ぎます。保定観察料や保定装置代で1万円程度の費用が目安です。
歯科矯正は一般的に保険適用外ではあるものの、顎変形症による咬合異常の場合や、厚生労働省が規定する咬合異常に当てはまる場合などは、保険が適用されるケースもあります。
保険が適用されれば費用負担が抑えられるため、保険適用条件を確認することは重要です。
矯正費用の保険適用と補助金
矯正治療は、保険適用や補助金を受けることで費用負担を軽減することができます。歯科矯正は一般的に保険適用外ではあるものの、顎変形症による咬合異常の場合や、厚生労働省が規定する咬合異常に当てはまる場合など、保険が適用されるケースもあります。
保険が適用されれば費用負担が抑えられるため、保険適用条件を確認することは重要です。
ここからは、矯正費用に使える補助金や保険が適用されるケースをご紹介します。
乳幼児医療費助成制度
乳幼児医療費助成制度とは、各地方公共団体が乳幼児の患者に対する入院・通院費用を助成する制度です。対象は健康保険が適用される治療を行った場合のみで、要件や対象年齢は各都道府県や自治体ごとに異なります。
全額補助は8県、一部補助が39県あり、就学前の児童を対象とする都道府県・自治体が多い傾向です。利用に際しては、お住まいの地域にある自治体への確認や、ホームページで要件や対象年齢を確認しましょう。
※参照
令和3年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28023.html(参照:2024年11月22日)
医療費控除と高額療養費制度
医療費控除とは、基準値を超えた分の医療費が課税対象の所得から控除され、税金の一部が還付される制度です。本人とその家族が1年間に支払った医療費が基準額を超えた際、確定申告を行うことで受けられます。
高額療養費制度とは、医療機関で支払う1ヶ月間の費用が上限を超えた際、超えた金額が払い戻される制度です。自己負担限度額は所得区分によって異なります。
医療費控除や高額療養費制度は、歯並びによって引き起こされる咀嚼や発音障害など、改善が必要であると医師が判断した場合に適用されます。審美目的の場合は対象とならないことに注意が必要です。
保険適用になるケース
歯科診療には保険診療と自由診療の2種類があります。保険診療は健康保険などの公的医療保険制度が適用される診療で、自由診療は保険が適用されない診療です。
矯正歯科治療は一般的には保険適用外ではあるものの、以下の場合に限り保険診療の対象です。
・厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常の矯正歯科治療
・前歯及び小臼歯の永久歯のうち、3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)に対する矯正歯科治療
・顎変形症(顎離断などの手術を必要とするものに限る)の手術前・後の矯正歯科治療
なお、保険適用の治療を受けられる病院は限られます。保険診療を受けるためには対応する病院での治療が必要ですので、事前に確認するようにしましょう。
※出典
別に厚生労働大臣が定める疾患|日本矯正歯科学会
https://www.jos.gr.jp/facility(参照:2024年11月22日)
その他、矯正費用を安く抑える方法
保険診療や補助金が受けられない場合、少しでも矯正費用を安く抑えたいとお考えの方も多いでしょう。最後に、その他の矯正費用を安く抑える方法について2点ご紹介します。
一期矯正からはじめる
子供のうちに歯科矯正をする場合は、一期治療からはじめることが費用を安く抑えるポイントです。
一期治療は、骨格が成長しきっていないうちに治療を開始するため、歯を動かしやすく治療の難易度が下がります。その結果、二期治療の期間短縮や、抜歯の可能性を減らすことにもつながります。
成長してからの矯正治療は歯を動かしにくく、時間がかかるため、費用は増える傾向です。子供のうちから歯列矯正を検討する場合は、一期治療からはじめることで費用を抑えられるでしょう。
デンタルローンや分割払いの利用
デンタルローンや分割払いに対応する歯科医院を選ぶことで、一回あたりの費用負担を軽減できます。
デンタルローンとは、病院が提携するローン会社を利用した支払方法です。通常のクレジットカード払いより金利を安く抑えられる可能性があり、1回あたりの負担額を減らせます。また、歯科医院によっては、治療費の分割払いが可能な場合もあります。
一般的に、歯科医院で対応している分割払いは手数料や金利が発生しないことが多く、金利がかからなければ、総支払額が増えることはありません。
デンタルローンや分割払いはすべての病院で取り扱っているわけではないため、利用を希望する場合は事前に問い合わせましょう。
まとめ
歯科矯正は大人になってからも受けられる一方で、骨や顎が成長段階にある子供のうちに行うことで多くのメリットがあります。
子供の歯並びや噛み合わせが気になる場合は、歯科医院で矯正治療が必要かを相談するとよいでしょう。子供の口腔内の健康維持やコンプレックスの解消のために、歯科矯正について理解を深め、治療を受けるか否かを検討する参考にしてください。